第十八話 新幹線の中でその十
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「僕よりずっといい医者になるって思ってたら」
「それで、ですか」
「実際にそうなったみたいだね、そして君がね」
「はい、姉さんに言われて」
「ここに来たんだね」
「そうなりました」
「ゆっくりとしていくんだよ」
こうもだ、岡島は優花に言った。
「そしてね」
「はい、療養所の中で僕は」
「そこから先は言ったら駄目だよ」
周りを目だけで見回してだ、岡島は優花に忠告した。
「人には耳、そして目があるからね」
「だからですか」
「そう、療養所に入るまでは」
「それまではですか」
「言わないでね、そして療養所に入っても」
それからのこともだ、岡島は優花に話した。
「君は離れにいるから」
「僕のことを秘密にする為に」
「そう、だからね」
「一人でいることはですか」
「多いよ」
「やっぱありそうですよね」
「そう、けれどね」
それでもというのだ。
「僕達がいつも行くから」
「寂しくないですか」
「そういう風にするよ、それにね」
「それに?」
「離れの場所にあるけれど」
岡島は優花に彼が入るその場所のことも話した。
「奇麗な部屋で景色もよくて設備も充実してるよ」
「そうなんですね」
「そして料理もね」
それもというのだ。
「いいから」
「生活は、ですね」
「いいよ、それにお風呂もあるから」
「お風呂もですね」
「毎日入られるよ、掃除は職員の人達がしてくれるし」
「そうした場所ですか」
「ホテルの一室みたいな場所だから」
優花が入るその部屋はというのだ。
「楽しんでね」
「わかりました」
「確かに一人でなることは多いけれど」
「それでもですね」
「君は悪いことは何もしていない、誰も君におかしなことはしないよ」
こうも言った、優花に。
「だから安心してね」
「はい、じゃあ」
「車に乗ってくれるかな」
優しい微笑みでだ、岡島は優花に言った。
「これから」
「はい、それじゃあ」
「街からは離れた場所にあるよ」
その療養所はというのだ。
「海の近くのね」
「街からは遠いんですね」
「そうなんだ、そこはね」
「それじゃあ」
「車に乗ってね」
「お世話になります」
「お世話じゃないよ、これも仕事だし」
岡島は優しい微笑みのまま優花にさらに話した。
「それにね」
「それにっていいますと」
「僕はこうしたことが好きだから」
優花にこうも言ったのだった。
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