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第百十八話
第百十八話 魔笛
笛の音自体は綺麗な曲であった。とても紫の魔女の最高の術には聴こえない程だ。
だが五人はそれを聴いても油断してはいなかった。魔女の恐ろしさを誰よりも知っているからだ。
「何が来るか」
「鬼が出るか、蛇が出るか」
五人はそれぞれ身構えていた。魔女をしっかりと取り囲んでいる。
「さあ、聴きなさい」
魔女は笑った。
「魔笛、その調べを」
「魔笛!?」
「どうしたの、春奈ちゃん」
赤音が春奈の驚いた声に反応した。
「魔笛ってモーツァルトの曲だったわ」
「そういえば授業で習ったわね」
美樹がそれに頷く。
「確かモーツァルトの最後の方のだったっけ」
「そうよ、モーツァルトが死の間際で作曲したオペラ」
魔女は梨花の言葉に応えた。
「それがこの曲。その中の『何と美しい姿』よ」
主人公であるタミーノ王子がヒロインのパミーナ王女の肖像画を見て歌う曲である。テノールの美しいアリアとして知られている。
「いい名前ね」
「そうでしょ」
今度は華奈子の言葉に応えた。
「そう、何と美しい姿」
「!?」
華奈子はその言葉に何か引っ掛かるものを感じた。
「それがこの曲の名前を」
「まさか」
気付いた時にはもう遅かった。五人とそれぞれの使い魔達を稲妻が襲った。
「!?」
「しまったわ!」
「ふふふ、上手くいったわね」
魔女は稲妻が華奈子達を襲ったのを見てほくそ笑んだ。
「これが。この曲の力なのよ」
華奈子達は動けなくなってしまっていた。金縛りであった。
「まさかとは思ったけれど・・・・・・」
「気付くのが一瞬だけ遅かったわね」
「ふんっ」
「そして魔笛の曲はこれだけじゃないのよ」
「というと」
「そう、これとセットなのよ」
魔女はまた笛を構えた。
「これで決まるわ。最後の曲は」
「最後の曲は」
「復讐は地獄の様に」
「地獄・・・・・・」
「さあ、覚悟はいいかしら」
魔女の声が一際冷徹なものになっていた。
「これで決着がつくわ。私の勝ちで」
魔女の笛がはじまった。それはうって変わって激しい調べであった。
第百十八話 完
2006・5・23
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