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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十六話 凶刃
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と憲兵隊には良い感情を持っていない」

エーリッヒが頷く。
「憲兵隊と情報局に情報の確認をすれば、卿に知られることになる。彼は卿に知られること無く情報を得ようとしたんだ」

「何を知ろうとした?」
「……陛下の健康問題だ」
「……厭な奴だ」

吐き捨てるような口調だった。余程嫌いなのだろう。
「エーリッヒ、身辺の注意が必要だな」
俺の言葉にエーリッヒはほんの少し小首をかしげ考え込んだ。

「……オーベルシュタインが動くのは内乱が起きるのが確定してからだろう……起きる寸前かな。あるいは伯には別働隊を指揮してもらうから、本隊との合流寸前か合流してからか……」

「何故そう思う?」
「暗殺だけじゃ駄目なのさ。軍の実権も握らないとね。わかるだろう?」
「なるほど、内乱を目の前に犯人探しはやっていられないか」

俺の言葉にエーリッヒは頷いた。
「しかし、いずれ犯人は捜すことになる。どうするつもりだ?」
「別な犯人を用意するさ」
「?」

「リヒテンラーデ侯だ。彼を暗殺の真犯人にしたて、エーレンベルク、シュタインホフ両元帥もそれに同調したとして処断する。それで帝国の実権を握る」

「馬鹿な! 卿をリヒテンラーデ侯が暗殺するなど有りえない。誰も信じないぞ、そんなことは」
「そうでもない。先日ももうちょっとで決裂する所だった。決裂すれば容赦なく私はリヒテンラーデ侯を始末したよ、躊躇わずにね」

「……」
「オーベルシュタインはローエングラム伯から聞いているはずだ。必ずそれを暗殺の理由にするだろう。そして帝国の実権をローエングラム伯に持たせる。賭けても良い、必ずそうするよ。それしか手が無いからね」

そう言うとエーリッヒは微かに微笑んだ。痛々しいような微笑だ。イゼルローン要塞陥落以降ずっと戦い続けている。そして勝ち続けている。にもかかわらず敵は減らない、かえって厄介さが増しつつある。

ローエングラム伯ラインハルト、美しい野心的な目をした男だ。覇気も能力も有るだろう。そしてエーリッヒは野心など欠片も持たない穏やかな男だ。平和な時ならば無名の一平民として一生を終えただろう、何の不満も待たずに……。

ローエングラム伯、貴方には分からないのだろうな。野心を持つ男を制御できるのは野心を持たない男だけだということに。

貴方が上に立っても組織は安定しないだろう。能力や覇気で上に立っても下のものの野心を制御することは出来ない。かえって野心を刺激し反発させるだけだ。

エーリッヒが野心家だったら必ず貴方を潰しただろう。今のエーリッヒだから貴方を使えるのだ。そして貴方にはエーリッヒは使えない、持て余すだけだ。使えるのであればあのような失敗はしていない。

どちらが不運だったのだろう。この時代に生まれたエーリ
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