六十一話:神
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じられないと誰もが零す。加速や巻き戻しまでであれば理解ができた。時間とは常に流れているものだという常識に当てはめることができた。しかしながら、時を止めるなど信じられなかった。
「残念ながら私には生体の時を止めることはできない。もっともオリジナルに近い力となればそれも可能になるだろうがね」
他者の生命を加速、巻き戻し、停止は現状ではできない。しかし、より切嗣の能力に近づけばそれすらも可能となる。さらに言えばそこにある聖杯の力を使えばすぐにでも行えるようになるだろう。だが、急いでそんなことをする必要はない。
「そうだ、その表情だ。その絶望が、恐怖が―――神だ」
絶望の表情を浮かべるはやて達に歪んだ笑みが向けられる。さらに絶望を煽るように停止した砲撃を巻き戻し胡散させる。それを見てはやて達は否応なく理解する。自分達は遊ばれていたのだと。彼は自分達の攻撃など避ける必要などなかったのだ。ただ、絶望する表情を見たいがために手を加えていたのだ。
「さて、ここまで楽しませてくれたお礼だ。一思いに殺してあげよう」
スカリエッティが指を鳴らすと無数の剣が宙に現れる。衛宮切嗣を殺したものと同じ魔法だ。それをはやてに向けながら彼は残虐な笑みを浮かべる。
「まずは八神はやて、君だ。喜ぶがいい。父親と同じ死に方ができるのだからね、くくくく」
無数の剣が襲い掛かってくる。全てがスローモーションに見えるが避けることはできない。否、避ける気力がなかった。どうしようもないことを悟ってしまった。自分にはもう何もできない。戦うことも、逃げることもできない。ただ一つ、できることがあるとすれば。
「……たすけて」
助けを乞うことぐらいだろう。
何の意味もない、誰も来てくれない、無意味な声。この世界に他の誰かが来るわけもなければ、仲間の誰もが絶望し動くことができない。こんな状況でもし助けに来てくれる人間がいるとすれば、それは―――
「ああ――勿論だよ」
―――正義の味方に他ならない。
突如現れた一人の男がはやての前に立ちスカリエッティの攻撃を全て叩き落す。
「馬鹿な…なぜ…なぜ…君がここにいるのだね……」
弾き飛ばされた剣軍に初めて笑みを無くすスカリエッティ。そんな相手を気にする素振りすら見せずに助けに入った男は優しくはやての頭を撫でる。
「頑張ったね、はやて。もう大丈夫だよ」
はやては顔を上げて男の姿を見る。血で赤く染まったコートを肩からマントのように掛け流し、髪は銀のような白に染まり、肌は不健康そうに黒ずんでいる。それでも瞳だけは記憶にあるものと同じで死んだ目でありながらも優しかった。
「おとん……なんで、生きて…ううん、なんでここにおるん?」
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