六十一話:神
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……ッ!」
「エリオ! スカリエッティの言葉になんて耳を貸しちゃダメだよ!」
「おやおや、人聞きが悪いね。私は彼を救ってあげたいだけだよ」
原因不明の吐き気に襲われて思わず口を塞ぐエリオにフェイトが叫びかける。そんな様子をスカリエッティはニヤニヤと嗤いながら見つめる。人の心の傷口を切開しその様を見物する。どこまでも趣味の悪い行為であるが彼はそこに楽しみを見出している。
「弱さとは悪かもしれない。しかし、私達は生命を弄ぶ悪行により産み落とされた者達だ。弱さや悪を認めなければ我々の存在そのものが否定されるとは思わないかね?」
なおも、スカリエッティは傷口を広げていく。実に楽しそうに、無邪気な子どもが虫の手足をもいでいくように。
「悪という存在は人になくてはならない存在だ。何も恥じ入ることはない。私達は悪として人に救いを与えることができるのだ。このまま勝ち目のない戦いなどしても君達に益はない。それでもまだ抗うかね? ―――悪をもって人を救う神に」
在り方はこの上なく邪悪だ。しかし、悪でなければ救われない人々は少なからずこの世に存在する。そうした者達からすればスカリエッティは紛れもない救世主だろう。果たして倒してもいいのだろうか、誰かにとって希望となり得る存在を。弱気な考えがフェイト達の頭をよぎる。だが、そんな考えを―――一発の銃弾が吹き飛ばした。
「……抗うかね、八神はやて」
コンテンダーの銃弾が掠り、破れた袖を見ながら静かな声で話しかけるスカリエッティ。
「あたりまえや。あんたになんか救ってもらう必要はないわ」
「人間の弱さを、悪性を否定するのかね?」
どこか失望したような声ではやてに問いかけるスカリエッティ。それに対してはやては静かに首を振りながら父の形見のコンテンダーをしまう。
「否定するつもりなんてないわ。あんたには一言だけで十分―――人間舐めんなや」
―――人は弱い。
何かを支えにしなければ、拠り所がなければ生きていけないほどに。
悪に逸れる人間もいるだろう。
だが、人は弱さを強さに、優しさに変えることができる。
悪性と善性両方を兼ね備えながら善性を取ることができる。
弱さも悪も心に秘めながらでも、人はきっと強く生きられる。
そう、彼女は人を信じ続けている。
「く! ふははははっ! 父は人間に絶望し、娘は人間を信じ続けているか。くはははは! これは面白い。いいだろう、君には敬意を表し―――本物の絶望を見せてあげよう」
「そっちこそ、後で泣いて謝っても知らんで」
冷たい眼光がお互いを睨み付ける。もはやここより引くことはどちらにもできない。それははやての啖呵に勇気づけられたフェイト達も同じである。この世界から出るこ
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