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Three Roses
第七話 子をもうけぬままその四

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「エヴァンズ家の血を守っていく」
「ロートリンゲン家に対しても」
「そうしていきますね」
「あの家は王国に対しては味方だ」
 外敵に対してはというのだ。
「しかし王位継承に対してはだ」
「油断のならない相手」
「敵ですね」
「我等の王位を狙う」
「そうした相手ですね」
「間違いなくこの国の王位を狙っている」
 ロートリンゲン家が過去にそうしてきた様にというのだ。
「そのことを忘れないことだ」
「わかりました」
「では乗っ取りにも注意しつつ」
「王にはまずですね」
「お子を」
「そう願っているがな」
 そして勧めているがだ、王のその務めを。
「お身体が優れぬのだ、特にな」
「お身体にいいものを勧められていますね」
「東西の霊薬までな」
 まさにとだ、大公は側近の一人の問いに答えた。
「そのうえで毎食だ」
「お口に入れてもらっていますか」
「そうしているが」
「しかしですか」
「ユニコーンの角を手に入れた」 
 大公はこの霊薬、絶対のものとされるそれをというのだ。
「そしてそれもだ」
「王にですね」
「飲んで頂く」
「そして精をつけてもらいますか」
「是非な」
「お子を」
「そうだ」
 こうその側近に語った。
「そのことが第一だ」
「やはりそうなりますね」
「何としてもと思っているが」
「あの」 
 別の側近が大公に聞いてきた。
「大公ご自身は」
「私か」
「お子をもうけられようとは思っておられないのですか」
「マリア以外にか」
「そう思われていないのですか」
「王位継承権第一位の私の子ならだな」
「はい、有力な王位継承権をお持ちですが」
 即ち二位以降のというのだ。
「王位継承は我が国においては男子が優先されますので」
「だから私もか」
「お子をもうけられるおつもりは」
「どうもだ、私はマリーが生まれ育ったが」
 娘でいる彼女がいるがというのだ。
「しかしだ」
「それでもですか」
「知っていよう、私は確かにマリー以外の子が何人かいた」
 言葉は既に過去形になっていた、そこにもう答えが出ていた。
「しかし皆死産か生まれて数年でだ」
「みまかられた」
「そうなったからというのですね」
「だからですか」
「大公はもう」
「そうだ、妻はいるが」
 正妻がだ、尚大公には側室はいない。大公は元々好色ではないししかも複数の女を同時に愛したり遊ぶ性分でもないのだ。
「しかしな」
「もうお子はですか」
「私はいい」
 これが答えだった。
「マリアが育ってくれているだけで奇跡だ、それにだ」
「それにとは」
「そもそも夜の務めが出来なくなった」
 このことも理由としてあるというのだ。
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