第七話 子をもうけぬままその一
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第七話 子をもうけぬまま
王の顔色が悪くなってきていた、元々身体は弱かったが。
近頃めっきりそうなっていた、その王を見てだった。
宮廷に出入りしている者達、他国の者達も含めてだった。こう囁き合った。
「まだお若いがな」
「お妃を迎えられたばかりだが」
「それでもな」
「前からお身体が弱かった」
「だからな」
「もうだ」
「長くないのかもな」
こう話す、そして太子もだった。
自国から連れてきた彼の側近達にだ、こう囁いた。
「長くないな」
「そうですね、おそらく」
「あのお顔を見ますと」
「死相が浮かんでいます」
「それを見るとです」
「やはり」
「王の崩御は近い」
太子ははっきりと言った。
「間違いなくな」
「では次はですね」
「宰相であり摂政でもある大公殿が王になられる」
「そうなられますか」
「王位継承権は第一位だ」
太子はこのことからも話した。
「だからな」
「はい、王位継承は間違いないですね」
「あの方が次の王ですね」
「そのことはもう決まっていますね」
「やはりそうですね」
「あの方しかいない、そしてだ」
太子はさらに話した。
「マリー王女、マリア王女となりだ」
「お妃様ですね」
「その順番となりますね」
「セーラ公女も継承権を持っているが」
彼女のことも話した。
「しかしだ」
「あの方はマイラ様より後ですし」
「特に考える必要はないですね」
「あくまで考えられるのはマイラ様までですね」
「お妃様だけですね」
「そうだ、しかもセーラ公女は半島に行く」
そこに嫁ぐことも話した。
「マリア王女は島国だ」
「ではお二人は、ですね」
「それぞれの国に行かれるので継承権は遠くなりますね」
「順位はそのままでも」
「そうなりますね」
「王宮にいるのといないのとで違う」
継承権には地の利もあるというのだ、その国を継ぐべき者といっても玉座の傍にいる方がいいというのだ。
「ましてや嫁いだことを理由にだ」
「継承権の優先を下げることも出来ますね」
「それぞれの国に専念されよと言って」
「そうして」
「そうだ、それが出来るからだ」
だからというのだ。
「ここはだ」
「王に何かあり」
「その後の大公もですね」
「早く去る」
「それならば」
「その時は我が妻をだ」
マイラ、彼女をである。
「この国の主に出来るかも知れない」
「太子、ですが」
太子の今の言葉にだ、側近の一人がすぐに言って来た。
「一つ問題があります」
「マリー王女だな」
「はい、あの方がおられます」
「わかっている」
太子はその目を鋭くかつ晴れやかにさせて答えた。それは既にわかっているという返事だった
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