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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十五話 苦悶
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ただき有難うございます。彼女は私の副官を務めるヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中佐です」
「ようこそ、ヴァレンシュタイン元帥、フィッツシモンズ中佐、マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ男爵夫人です。そして彼女がアンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人ですわ」
挨拶が終わって席に座り、お茶を飲み始めた。ヴァレンシュタイン元帥にはココアが出された。どうやら男爵夫人は元帥の嗜好を調査済みらしい。
「男爵夫人、私の両親が生前お世話になったそうですね」
「……いいえ、お世話になったのはこちらです。御両親の事は本当に残念でした」
一瞬だけど男爵夫人と伯爵夫人に緊張が走ったように見えた。元帥の御両親が貴族に殺された事は私も知っている。そのことが元帥の貴族嫌いに繋がっている事も。この二人も貴族だ、やはり思うところはあるのだろうか。元帥から聞いた話では元帥の父親が男爵家の顧問弁護士をしていたとの事だけれど……。
「今日は元帥にお会いして御礼が言いたかったのです」
「私にですか」
グリューネワルト伯爵夫人が元帥に話しかけた。
正面から伯爵夫人を見るとやはりローエングラム伯とは違うと思う。顔立ちは似ていても、雰囲気がちがうのだ。伯爵夫人にはローエングラム伯の持つ鋭さ、覇気は無い。
「ええ、陛下がとてもお元気になりました」
「……」
「今までは、どちらかと言えば生きるのが辛そうにしておいででしたが今は本当に生きる事を楽しんでおいでです」
伯爵夫人は陛下を愛している。十五歳で後宮に入れられた。決して望んだ事ではないだろう。それでも陛下を愛している、あるいは気遣っている。そうでなければわざわざ元帥に御礼など言わないだろう。
「……」
「元帥のおかげです。陛下は元帥のおかげで生きる事が楽しくなったと。有難うございました」
「伯爵夫人、私は礼を言われるようなことは何もしていません。お気遣いは御無用に願います」
「ですが」
「本当に何もしていないのです」
「そうですか……」
伯爵夫人も元帥も困ったような顔をしている。どうやら二人ともこういうのは苦手なようだ。気を取り直したように伯爵夫人が言葉を紡いだ。
「元帥にはもう一つ御礼を言わなければならないことが有ります」
「?」
「弟のことです」
「ローエングラム伯のことですか?」
「元帥の御口添えのおかげで、軍に留まる事が出来ました。遅くなりましたが、御礼を言わせてください、有難うございました」
「伯爵夫人、ローエングラム伯が軍に留まったのは伯自身の力によることです。反乱軍を打ち破るにはローエングラム伯の力が必要でした。こちらも礼を言われるような事ではありません」
元帥は穏やかだが、きっぱりとした口調で伯爵夫人に告げた。しばらく
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