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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第46話 展望
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「サービスだよ。若いんだ食えるだろ?」
「あ、ありがとうございます。」

 たこ焼き屋のお爺さんの素っ気ないながらも気を利かせたおまけに礼を言う。

「わぁ……美味しそうですね。」
「そうだな、PXにはあまり置いていないから新鮮だ。」

「私も最後に食べたのはちっちゃい時以来ですから……本当に、懐かしいです。」

 たこ焼きを持って駅近くに設定された旅館のバス乗り場へと移動しながら唯依が懐古に目を細める。

「意外だな、篁のお嬢様がこんなジャンクを口にしていた事があるとは。」
「……忠亮さんは私をどんな箱入りと思ってるんですか。」

「すまんすまん」

 半目で睨む唯依に苦笑しつつも謝る忠亮、実際市政で人気の食べ物とはいえ上流階級出身である唯依に馴染みがあるとはどうしても思えなかった。

 ―――ついでに、箱入りと聞いて段ボールに入っている小さくデフォルメされた唯依を想像したのは内緒。

「小さいころにお父様に連れられてお祭りに行ったとき食べたんです。私、はしゃいじゃって―――いつの間にか疲れて寝ちゃったんです。お父様がそんな私を背負って、お母様がそれを見守っていて。」

 懐かしい、言葉にせずともその気持ちはわかる。唯依にとって掛け替えのない亡き父との思い出。そして理想の家族の在り様なのだろう。

(おれ)達もそんな風に思い出を作っていこう。」
「はい。」

 そうやって道を歩く一緒に、歩道の地面に木漏れ日が揺らいでるのが見えて、空を見上げた―――その時だった。

「……あ」

 ふと、気づいた。今までの自分との内面の明らかな違いに。

「どうした?」
「ううん、何でもありません―――ただ、空ってこんなに綺麗だったんだなって驚いただけです。」

 嘘じゃない、だけど全部ではない。
 自分が何をすべきか、それに反しない限りで自分の欲望を通してきた。今となりを歩いている人との婚約もそうだった。
 だけど、今は違う………自分がどういう風に生きたいのかがはっきりと見えた。

 自分はこの人とずっと一緒に歩んでいきたい―――純粋に、ただそれだけを願う。

「忠亮さん、ちょっとお下品ですけど歩きながら食べちゃいましょうか―――はい、あーん。」
「ん、あぁ……」

 楊枝に刺したたこ焼を忠亮の口に放り込むと、その楊枝で自分もまたたこ焼きを頬張る。

「はふ、はふ…………美味しいです。」

 口の中でとろりと熱々の生地が流れ出てきて、ソースの香ばしさと混じり合い紅ショウガなどのアクセントの効いた深みのあるハーモニーを編み出す。
 二人で一緒にさほど特別でもない物を食べながら歩いているだけ―――たった、其れだけなのにすごく楽しい。

 暖かい気持ちが溢れて
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