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第百話
第百話 お買い物
「ねえ御主人」
土曜日に持って行くお弁当の準備に食材を買いに行く美樹に彼女の使い魔であるビルガーとファルケンが声をかけてきた。
「何?」
「何か楽しそうですね」
「当たり前じゃない」
美樹は何時になく楽しそうな声で使い魔達に返す。
「だって久し振りに信也と一緒に遊びに行くのよ。楽しみじゃない筈ないじゃない」
「いや、それでも」
二羽は言った。
「何時になく楽しそうだから」
「他に何か理由があるのかなって」
「理由ね」
美樹はそれを聞いて不思議な表情を作った。笑っているのだがそこに何かを隠しているようであった。
「やっぱり楽しみだってことかしら」
「それだけ?」
「ええ、それだけよ」
「ホントかなあ」
ファルケンはそれを聞いて空中で首を傾げさせた。
「それだけだなんて思えないんだけれど」
「あら、疑り深いのね」
「別にそうじゃないけど」
言葉が今一つキレが悪い。
「ちょっとね」
「隠し事も何もないわよ」
「そうじゃなくてさ」
「何て言うか」
「疑ってるの?」
「だから違うって」
二羽は反論した。
「何かやけにテンション高いなって思って」
「いつもの御主人に比べて」
「そりゃ高くもなるわよ」
美樹は答えた。
「私大好きなんだもん」
「信也君が?」
「ええ。それにピクニックも」
足取りも軽いものになっていた。
「楽しみなのよ。それにお料理を作るのもね」
「成程」
「その三つが揃っているから」
「そうよ、メニューは何がいいかな」
「そうだね」
二羽はそれに応えて考え込んだ。
「サンドイッチなんてどうかな」
「あれだったら手軽に作れるしバリエーションもあるし」
「そうね、じゃあそれにしようかしら」
「うん」
「私達も手伝うわ」
「有り難う。それじゃあ宜しくね」
美樹は二羽を連れてスーパーへと入って行った。その鞄の中に使い魔達を隠して。そして買い物に興じるのであった。
第百話 完
2006・3・21
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