第十八話 新幹線の中でその一
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第十八話 新幹線の中で
優花は一人で新幹線に乗りその席に座った。指定席に座り二人と別れの挨拶をして手を振り合ってだった。
一人になってからは窓の外を見た、そうして。
その後はこれからのこと、特に自分の身体のことを考えていた。だが。
考えてもだ、何か暗くなりそうだとも思ってすぐに考えることを止めた。そして。
そのうえでだ、売り子のお姉さんが来たのでお弁当を頼んだ。お姉さんは優花に笑顔でこう尋ね返した。
「どれにされますか?」
「そうですね、それじゃあ」
その弁当達を見てだ、優花はお姉さんに答えた。
「海鮮弁当にします」
「北海道のですね」
「はい、それと」
優花はお姉さんにさらに言った。
「お茶も」
「そちらもですね」
「お願いします」
「わかりました、それでは」
お姉さんは完璧な対応で応えてだ、そのうえで。
優花にその弁当とお茶を出した、そして。
優花はお金を払ってから受け取ってだ、そうしてだった。
弁当を食べてだ、お茶を飲んだ。そのうえで。
また景色を楽しんだ、もう岡山に着いていて広島に向かう途中だった。山や人家が窓の向こうに見える景色は昭和の日本が残っていた。
その景色を見ているとだ、広島駅に着き。隣の空いている席にサラリーマンと思われるスーツを着た初老の男が来た。彼はその席に座ってだ。
すぐにだ、優花にこう言って来た。
「隣いいかな」
「あっ、はい」
「とはいっても指定席だけれどね」
広島訛りのある言葉でだ、男は優花に笑って言った。
「この席は」
「おじさんのですね」
「そう、ちょっとこれから仕事でね」
それでとだ、男は優花に笑顔のまま話した。
「鹿児島まで行くんだ」
「鹿児島ですか」
「そうなんだよ」
こう笑って言うのだった。
「一旦博多で降りてそこでも仕事して」
「そこからですか」
「一気にね」
その博多からというのだ。
「鹿児島まで行くんだよ」
「鹿児島は遠いですね」
「いやいや、今は近いよ」
「そうなんですか」
「特急ですぐだからね」
博多からというのだ。
「もうね」
「そうなんですか」
「近くなったよ、鹿児島も」
「九州の南で遠いって思ってましたけれど」
「昔はね、若い時から仕事で鹿児島には時々行ったけれど」
それがとだ、男は少し歯並びが悪いが白い奇麗な歯を見せながら優花に話した。髪の毛はいささか薄くなってきていて顔は膨らんでいるが好人物そうな顔立ちだ。
「いや、昔はね」
「遠かったんですね」
「そう、大変だったよ」
「昔は新幹線博多までだったんですね」
「そう、僕がまだ学生の頃はね」
その頃はというのだ。
「新幹線は博多までで」
「それでそこから
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