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真田十勇士
巻ノ五十 島津家の領地その六

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「この状況を生み出している」
「そういうことですな」
「迷惑な話です」
「火山の灰が土地を痩せさせておるとは」
「難儀なことです」
「関東も近畿や東海に比べて土地が悪いが」
 相模や武蔵を見て回ってだ、幸村が実感したことだ。
「しかしな」
「この大隅は」
「そしておそらく薩摩も」
「あの火山灰のせいで」
「こうした有様ですか」
「この火山灰だと水も悪い」
 幸村はこのことも察して言った、こうしたことを察することが出来るのも彼が深い学識を備えているからこそだ。
「田畑がよくなくなりそれに伴い人も少なくなり」
「商いもですな」
「賑やかになりませぬな」
「うむ、だから貧しい」
 この大隅はというのだ。
「そしておそらく薩摩もな」
「そうした状況がですか」
「島津家の戦につながっていますか」
「そうしたことにも」
「そうであろうな、そして貧しくな」
 さらに言う幸村だった。
「戦をせねばならぬからこそ」
「島津の兵は強い」
「そうなのですな」
「そうじゃ、思えば貧しい国の兵は強い」
 幸村はここで看破した、このことを。
「そうじゃな」
「言われてみればそうですな」
「貧しい国の兵は強いですな」
「逆に豊かだと弱いですな」
「どうにも」
「武田の兵は強かった」
 甲斐の兵はというのだ。
「そうであったな」
「はい、信玄公の采配もありましたが」
「真田家もありましたな」
「武田家の中に」
「その武田の兵もな」
 まさにというのだ。
「強兵であったが」
「その甲斐、そして信濃も」
「貧しい」
「そうした国々だというのですな」
「山ばかりで海もない」
 甲斐も信濃もというのだ。
「盆地に人がおるだけじゃ」
「耕地は少ないですな」
「確かに。上田にしても」
「我等の地にしても」
「うむ、そして近畿や東海の兵は弱いであろう」
 幸村は彼等の話もした。
「そうであるな」
「ですな、近畿の兵は弱いです」
「東海の尾張や駿河の兵も」
「東国でも相模の兵は弱いです」
「実に」
「豊かだと弱くなる」
 兵達はというのだ。
「戦わずとも欲しいものは既にあるならな」
「戦おうと思わない」
「それ故に弱いのですな」
「豊かな場所の者達は」
「戦をしようと思わないからこそ」
「そうだと思う、そして大隅等はな」
 その島津家の領地はというと。
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