巻ノ五十 島津家の領地その三
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「戻るぞ」
「全員で生きて帰って」
「また上田で楽しく暮らす」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「皆でな」
「功を挙げ」
「そして、ですな」
「上田で皆で再びですか」
「楽しく過ごすのですか」
「そうしようぞ、これまで通りな」
これが幸村の願いであり十勇士達にも言うのだった。
「だから無事に帰ろうぞ」
「注意に注意を重ね」
「そのうえで」
「島津の領地に入りましょう」
「これより」
「うむ、入るぞ」
これよりだ、幸村も言ってだった。
主従は遂に島津家の本領に入った。日向に入ると明らかに雰囲気がこれまでとはうって変わっていた。
島津の兵達が多くだ、民達も何処か違う。同じ日ノ本にあるというのに日向はまるで別の国の如きであった。
十勇士達はその町や村を見てだ、幸村に囁いた。
「家も店も人も服も同じですが」
「どうも、ですな」
「ここだけ違う国ですな」
「全く別の様な」
「うむ、西国と東国も違うが」
幸村も小声で話す、皆周りの日向の民達に聞こえぬ様に小声である。
「しかしな」
「ここはですな」
「それ以上の違いですな」
「箱根の東と西以上の」
「そこまでの違いですな」
「この違いはな」
まさにというのだ。
「異国じゃな」
「何よりも言葉がですな」
「九州の言葉の中でもです」
「また違います」
「独特の色が強いです」
「そうじゃ、だからな」
その言葉のこともあってというのだ。
「ここは違う国と思うことじゃ」
「ですな、ではまずはひゅうがを調べ」
「次は大隅、そして薩摩ですな」
「何といっても薩摩ですか」
「島津家はやはり薩摩じゃ」
その領地である三国の中でもとだ、幸村も言い切る。
「薩摩が本国の中の本国じゃ」
「だからですな」
「あの国は特に念入りにですか」
「調べる」
「そうしますか」
「そうしようぞ、では日向を用心しつつ見て回るとしよう」
こうしてだった、主従はその日向を念入りに調べた。そして耳川のところまで来てであった。
その一帯を見てだ、幸村は十勇士達に言った。
「ここで島津家と大友家が戦いじゃ」
「大友家が大敗してですな」
「島津家はそこから大きく飛躍しましたな」
「そうなりましたな」
「沖田畷ではな」
幸村はこの地の名前も出した。
「龍造寺家を破り今に至る」
「その一つですな、ここは」
「島津家を雄飛させた場所の一つ」
「ここで勝ったからこそですな」
「今の島津家がありますな」
「どちらも見事な勝利であった」
幸村は島津家の勝利を素直に褒め称えた、その言葉は兵法を知る武士として素直なこれ以上はないまでに純粋な賞賛の言葉だった。
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