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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十四話 アントン・フェルナー
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たような声でブラウンシュバイク公が確認した。アンスバッハ准将が黙って頷く。
「相手が結婚前に死んだのか、それとも結婚出来ないわけがあったのか……」
「まさかとは思いますが……」
「陛下はお若い頃は遊興と放蕩にふけっておられましたな……」
陛下は今年六十三歳、エーリッヒは二十二歳、可能性が皆無とはいえないだろう。陛下のかなり若い頃の出来事だな。昔々、在る所にから始まる恋物語か……。しかし、真実なら嘘から出た真だな。
しばらくの間無言の時間が過ぎた。三人で顔を見合わせ、それぞれの顔を確認しあう。
「確かに陛下の御寵愛はいささか気になるところだが、まさかな、しかし……、アンスバッハ、もう一度彼の母方の祖父を確認してくれ。話はそれからだ」
「分りました」
「フェルナー、その後フェザーンはどうだ」
「駄目ですね。フェザーンは未だ積極的には動けません。反乱軍の動きが見えるまでは無理です」
反乱軍は今回大きな損害を被った。政府、軍に人事を含め大きな変動があるはずだ。しかし、それがはっきりするのは十月下旬から十一月上旬になるだろう。フェザーンはそちらの動きを確認しなければ大きな動きは取れない。
「役に立たんな。黒狐も」
ブラウンシュバイク公は不満そうだ。出来れば何らかの動きをしてエーリッヒ達の目をひきつけて欲しい、そう思っている。
「ニコラス・ボルテックという男がオーディンに来ます。今回の弁務官事務所の不始末の件で謝罪に来るそうですが、政府がどういう対応をするかでフェザーンの動きも変わると思います。注意が必要でしょう」
「アンスバッハ、フェルナー、こちらから何か仕掛けることは出来んか。このままでは相手が仕掛けてくるのを待つだけだ」
その言葉に俺とアンスバッハ准将は顔を見合わせた。先日から二人で考えている事がある。そろそろ公にも説明する時だろう。
「ローエングラム伯を利用しようと思いますが」
「利用? 何を考えている、フェルナー」
「……」
エーリッヒ、卿には弱点が有る。ローエングラム伯だ。気付いているかな? いや気付いているのだろうな。
彼を副司令長官にして反乱軍を誘引し撃滅する。見事だよ、反乱軍は完璧に卿の策に嵌った。彼らにとってローエングラム伯は無力な皇帝の寵姫の弟に過ぎなかった……。
卿も彼も若い。卿が居る限り、ローエングラム伯は頂点に立てない。そのことに彼が何時まで我慢できるか? 卿が力量を発揮すればするほど彼は追い詰められるだろう。卿は強すぎるのだ。そして行き着くところは……。
卿はローエングラム伯を排除したいだろうな。だがシャンタウ星域の会戦の大勝利と皇帝の寵姫の弟という立場がローエングラム伯の立場を強化し卿を縛っている。
卿の弱点はこちらの強みだ。利用させても
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