SIDE:A
第二話
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。そんな緊張感の欠片もない子供を奇妙な目で見る九尾の狐。
『……お主、馬鹿なのか? なぜ妾を怖がらん』
今まで見てきた人間は妖魔という存在に対し否定的だった。人間の都合で一方的に住処を追いやられ、封印され、自由と尊厳を奪われる。
封印されてから百数十年、九尾の器である人柱力の中から外界を見てきたが、多くの人間はこの人柱力に対して排他的であった。
化け狐の器である人柱力は人と同列として扱われないことが多い。憐れに思うこともなくはないが、同情はしない。多くの人柱力は九尾をただの化け狐、力の象徴としか見ていないため関心を示すこともないからだ。
しかし目の前の人間は好奇心を隠そうとせず、興味深そうに話し掛けてくる。名前を聞かれたのも初めてのことだった。
「んー、なぜって言われてもなぁ。怖くないのは怖くないし。ああ、あれだ。俺、狐好きだからだよきっと!」
『す、好き!? なな、なにを言い出すのだお主は!』
突然告げられた言葉になぜか慌てる九尾。
ニコニコと笑顔を浮かべながら友達に話し掛けるような気軽さのハルト。
「変なこと言ってないよ、うん。狐好きだし」
『むっ、くぅ……! そ、そう気安く、す、すす好き、などというでないっ』
先ほどまでの威圧感はどこへ行ったのやら。可愛らしく狼狽する九尾の姿にハルトは心の中で大きく頷いた。
(よしよし、ちゃんと効果出てるな)
この忍術は生前愛読していた某使い魔の小説からアイデアを取ったものであり、魔法陣の中で時間が経過すればするほど、対象者は術者に対して好意を寄せるという効果を発揮する。
好意を寄せれば寄せるほど、主従契約から抗い難くなるのだ。相手の感情を歪めて契約を結ぶため、いささか外道な気もするがその辺りはすでに割り切っているハルトであった。
木の葉を、家族を守るためなら外道にもなろう。
「それでね、九尾さん。俺と契約して使い魔になってくれないかな?」
本題に入るハルト。流石にこの時ばかりは真剣な面持ちで九尾の顔を見上げていた。
『妾が、お主の使い魔になる、じゃと?』
そんな言葉をかけられるとは思っていなかったのか、きょとんとした目で見返してきた。
ハルトは大きく頷き、さらなる説得に力を入れる。
「そう、俺には君が必要なんだ!」
『……っ!? な、ななな何を言い出すのだお主は! そ、そんな妾が欲しいなどと……!』
「嘘じゃないよ、本気だもの! 俺には君が必要なんだ! 君が欲しいんだ!」
オネガイダヨー、オネガイダヨー! ツカイマニナッテヨー!
熱
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