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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第一章
三話 昔の話
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と名付けられたこの事件は、なのはやフェイトが所属したある一部署と、管理局一体となった対応により辛勝を収めた、ここ数年でも最も大きなテロ事件だ。

その戦いの、最終決戦。

容疑者が、ミッドチルダに対して衛星軌道上からの直接攻撃を行うために復活させられた古代兵器、“聖王のゆりかご”。
古代、ベルカ時代に、聖王と呼ばれ生きた一人の女性の遺伝子によってのみ起動するその兵器の(キー)として使用されたのは、聖王たる女性の遺伝子複製体(クローン)たる少女。ヴィヴィオだった。

自らの率いる分隊の副隊長と共にゆりかごに突入したなのはは、動力炉の破壊を副隊長に託し、単身ヴィヴィオの座す聖王の間へと突入。その場所で、(なのは)と、敵組織の一人から精神操作を受けた(ヴィヴィオ)は相対した。
聖王の証たる虹色の魔力を持って襲い来る娘に対し、なのはは揺らぎ無く戦闘を行い、そして、ゆりかごの停止、ヴィヴィオの奪還を、見事にやり遂げた……と、されている。

しかしこれは対外的に報じられた経緯である。実は……この話には一か所だけ、抜けている部分が有る。

単身、では無かったのだ。
否。本当は単身であったと言うべきか。

どのように、突入出来たのか、想像することは出来ても誰一人として知らない。しかし確かに、なのはとヴィヴィオとの戦闘中に、乱入してきた者が居たのだ。たった一人の、十一歳の少年……クラナ・ディリフスである。

突然現れたクラナに、流石のなのはも驚いた。
しかしそんな彼女にはお構いなしに、クラナは行動を起こした。すなわち……ヴィヴィオに襲いかかったのである。

止める間もなく始まった戦闘は、気が付いた時にはなのはにすらまともに介入できない超高速の格闘戦になっていた。
互いに叫びながら殴り合い、蹴り合い、相手をこの世から消し去らんとするかのように闘って……そして……

────

「…………」
シャワーを浴びたなのはは、体をふくとあらかじめ用意しておいた服を着て、いつもの母親モードに入る。
寝汗と共に、けだるさも流れたのか先程より体も軽かった。キッチンに向かおうと脱衣所から廊下に出る。と……

「……」
「あ……」
そこに、玄関から入ってきたクラナが居た。ジャージを着ているから、彼が日課としている朝のトレーニングを終え、帰ってきた所だろう。

「おはよう、クラナ」
一気に動悸が加速するが、それを務めて表情には出さず、なのはは微笑みながら息子に朝の挨拶。
クラナは数秒の間沈黙した後……

「おはようございます」
それだけ告げて、階段を上って行った。

「…………」
その背中を呼びとめることも出来ずに見送って、なのははもう一度俯く。

『これじゃ、だめだよね……』
彼と初めて出会ってから十三年
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