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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
幕間 悪魔のお仕事
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ンメルンとかバイエルンとか言う宇宙で二番目に美味いフリカッセを食わせる店に直行させた。そして一時間後には同盟首都星ハイネセンでも有名なファミリーレストランに、さらに二時間後には惑星ランタオのチャイナタウンの中華料理店に、夕食時には惑星ダイバの寿司店に、いずれも量に主点を置いたメニューを提供する店へと急行した。その度に帝国マルク札が、ディナール札が羽根を生やして飛んでいき、お相伴に与ろうとするヴィクトールの手や顔には張り手の痕、肉球型の腫れやハスキー犬の巨大な歯型が刻まれる。傍から見たら誰が喜劇の主人公なのか分からぬ滑稽ぶりである。
 だがそこはさすが悪魔、と言うべきか。
 『おいおい作者ちゃんよぉ、俺様は喜劇作家のはずじゃなかったのかぃ。役者に商売替えしたつもりはねぇんだがな』
 自分ひとり腹と分厚くなったばかりの財布を平たくされたうえお気に入りの車をベッドとして占領され、とある星の河畔で夕食を釣りつつ夜明かしする羽目になって舞台裏のさらに裏に向ってぼやいたとき、ヴィクトールは仕込みをほぼ完了していた。
 その悪魔的な頭脳に空腹の苛立ちと憂さをいまや記憶も消えかけ単なる小才子、単なる主人公となりつつある哀れな操り人形で晴らしてやろうとの考えが芽生えていたことは、説明を要すまい。
 「寝られないのかばう?」 
 「んぁ?」
 「お望みなら一緒に寝てやるばう」
 「子守唄も歌ってやるがう」
 「なーーーーーーーっ!!いらんいらん!!重いしうるさいからいらん」
 「遠慮するなばう」
 「寝るまで歌ってやるがう」
 「だーーーーーーーーっ、巨大化するな毛むくじゃら!暑苦しい!」
 釣り上げた夜食の鱒をお節介焼きな二匹の僕に横から攫われた挙句車のバックシートに放り込まれ、声量豊かな犬語の子守唄を一晩中聞かされた悪魔の企みが翌朝、さらに悪辣なものに変貌を遂げていたことも、多くを語る必要はなかろう。
 そして悪魔をも翻弄する運命は哀れな操り人形をさらに困惑と困苦、辛苦の中に叩き落とすことになるのであった。

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