第160話
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苦痛で歪む顔を喜んでいるように見えた。
猟犬はざらざらした舌で顔を舐めてくる。
抵抗するにもその力すら出ない。
一頭の猟犬が覆い被さり、顔を近づけてくる。
そこから漂う腐臭にも似た匂いに顔を背けようとするも、自由に身体が動かない。
口を大きく開ける。
喉の奥。
その奥の闇の中に一つの大きな目玉が制理を眼をしっかりと捉えていた。
これ以上見ていたらまずい。
吹寄制理という自我は破壊され、狂ってしまう。
夢なら早く覚めろ。
眼を逸らす事ができない状況で、心の底からそう思った。
そして、目が覚めると朝になっていた。
ちょうど看護婦が病室に入ってきた。
看護婦は顔色が悪いですよ、と心配そうな声で言う。
一瞬あの夢の事を話そうとしたが、所詮夢だ。
誰も相手にしてくれない。
何よりあの恐怖は実際に見て見ないと分からない。
今日で退院だ。
昨日診察を受けたカエル顔の医者とは別の医者の診察を受けた。
顔色が悪いからもう一日入院するかい?、と聞かれたが断った。
あんな夢は二度も見ない。
そう自分に言い聞かせて断った。
最後に麻生の病室を訪ねた。
部屋に入ると桔梗が先に入っていた。
麻生は制理の顔を見ると大丈夫か、と声をかけてきた。
彼には心配させたくないと思った制理は無理に笑顔を作って大丈夫だと答えた。
ふと、隣にいる桔梗に視線を向けた。
彼女も少しだけ顔色が悪いように見えた。
おそらく自分もあんな顔をしているのだと、その時冷静に制理は思った。
その日は昼から学校の授業に出席した。
小萌先生やクラスメイトからは顔色が悪そうだから無理はしないで、と言われたが最後まで授業に出席した。
全身を襲う疲れのせいで授業の内容はさっぱり入ってこなかった。
授業が終わり、荷物を纏めて寮に戻りベットに寝転がった。
よほど疲れていたのかすぐに眠りに入った。
けれど、見た夢はあの悪夢。
それも続きからではなく、初めからだった。
猟犬に身体を精神を弄ばれる夢。
違いがあるとすれば、制理に覆い被さってきた猟犬の口からどす黒い闇の手が出てきた。
それらは制理の身体を掴み、その闇に引き込もうとする。
おそらくあれに呑み込まれたら終わりだ。
吹寄制理のという人間の死が訪れる。
(覚めろ覚めろ覚めろ覚めろッッッ)
念仏を唱えるように強く念じる。
はっ、と目が覚める。
全身から汗が噴き出しており、服はびしょびょだった。
ふと、目覚まし時計を見ると次の日の朝だった。
病院から帰ってきた時から一日が経ったらしい。
睡眠時間からすれば寝過ぎとも言われるくらいだが、制理の身体には重苦しい気怠い感じが襲い掛かっていた。
たっぷり寝た筈なのに眠気が解消されない。
鏡を見ると目元にはクマができていた。
学校を休もうか
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