第160話
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一緒に食べる人同士で机を合わせて食べている。
制理は弁当持参組なのだが、一向に鞄から弁当を出す気配がない。
疑問に思った麻生は制理に声をかける。
「珍しいな、お前が弁当を食べないなん」
そこで言葉が止まった。
理由は制理の顔を見たからだ。
眼には黒いクマに若干頬がやつれている。
どこから見てもあの健康オタクの吹寄制理には見えなかった。
「何?」
気怠そうな声で麻生を見る。
その眼も声も弱々しいものだった。
「あ、ああ。
弁当食べないんだな。」
少し驚きながらも答える。
ここまで悪いとは思わなかった。
「最近、食欲がないの。」
疲れたような重いため息を吐く。
そこで何か思い出したのか制理は言う。
「退院おめでとう。
それとごめん、ちょっと気分悪いから。」
そう言って席を立つ。
ふらふらとおぼつかない足取りで教室を出て行った。
制理が出て行くと同時にクラスの女子達が話しかけてくる。
「吹寄さん、昨日から体調が悪そうなの。
休んだらって言っても、大丈夫の一点張りで。」
「小萌先生や私達でどれだけ言っても聞いてくれないのよ。」
彼女達の話を聞きながら麻生は思う。
あの猟犬の影響である事は間違いなかった。
まさかここまで影響を与えるとは思っても見なかった。
そして気がついた。
自分が普通の人間とは違う精神を持っている事を。
麻生は教室を出た制理を追い駆ける。
廊下に出るとちょうど制理が角を曲がる所だった。
走って追いかける。
角を曲がると制理が階段の手すりにもたれるように立っていた。
階段を一段下りようとして所だった。
フラリ、と制理の身体は揺れ、前に倒れていく。
「制理ッ!!」
能力を使って制理の所まで一瞬で移動する。
身体をしっかりと抱きしめて、そのまま階段を全段飛ばして下に着地する。
能力を使っているので痛みなどはない。
顔色を窺うと苦しそうな顔をしている。
麻生は抱きかかえたまま、保健室に向かう。
体調は良くなるどころか悪くなる一方だった。
吹寄制理は全身に感じる気怠さを我慢して学校に登校した。
あの事件の後、一日だけ入院する事になった。
麻生にあの記憶を思い出した事を話し、少しだけ浮かれていた。
そのままベットに寝転び、眠りに落ちて行く。
夢を見た。
それはまさに悪夢だ。
あの事件で必要に追ってきた猟犬が自分に襲い掛かる夢だ。
誰も助けに来てくれない。
猟犬に囲まれ、なすすべなく蹂躙される。
毒の爪は身体を引き裂き、針のような舌で身体を突き刺してくる。
そこから大事な何かを奪われていくのを感じる。
痛めつけられるだけ痛めつけられ、恐怖で泣き叫ぶ。
自分の泣き声や恐怖や
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