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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第10話『決意の夜』
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らない。でなければ、あんなドス黒い悲劇が起こっていい筈がないのだ。
歯車がガタガタに歪み、何もかもが噛み合わず空廻るこの現状のなんと不快な事か。スィーラという一人の無垢な少女に突き刺さる世界の残酷性の、なんと惨たらしい事か。
せめて、彼女をここから連れ出す。きっと
人間
(
かれら
)
は、自分たちを追って兵を挙げるだろう。
人間を裏切って魔族に手を貸した愚かな罪人と、街を壊滅に陥れたと一方的に決めつけた少女を追って。
ふと、メイリアの視線に気付く。
その紅の双眸が表す視線は、ベッドの横の簡易イスに腰掛けてスィーラを見下ろすジークの、その横顔を見つめていた。
――彼女を巻き込む訳にはいかない。
彼女は、スィーラを排斥などしなかった。彼女は最後まで死徒ではなく、スィーラという一人の少女と友人であろうとした。
彼女には、この先の長い人生を賭してまで償うべき罪など存在しない。
この自分勝手な贖罪に、付き合わせる必要は──
「――ジーク」
「……なんだよ」
「私も付いてくからね」
「……っ」
そんな浅はかな考えも、既に見通されていた。
さも当然の事を言っているかのように、呆気らかんとジークに宣言する。そのスィーラとはまた違った健康的な色の右手に握り締められたボロボロの杖が、ギシリと音を立てて小さく軋んだ。
「……駄目だ。家はどうする、家族もいるだろ、これまで育ててもらった恩を全部捨てる気か」
「街から出る前に手紙は置いてきた。今頃、『また裏切り者が出た』とか騒いでるんじゃない?」
「なっ……!お前、何して……っ!」
ジークが動揺し、思わずと言った風に声を荒げる。が、それを遮るようにメイリアが杖の柄を硬質の石床に叩きつけた。カァンッ!と、乾いたような大きな音が響き、驚いて喉に出かかっていた言葉が詰まる。
その杖を持つ手はプルプルと震え、口元を歪めて僅かに歯を食いしばっている。よくよく注視してみれば、彼女がいつの間にか纏っていた朱と黄を交えた『
魔法使い
(
ウィザード
)
』の証明たる法衣は、街の中央に設置された三天教の教会に飾られていた物だ。確か教会に居た宣教師は、『それがどんなものであれ、為すべき事のためへの覚悟を示した者に贈る』と言っていた。
その覚悟の果てにここに立つメイリアの鮮やかな赤い目には、静かな怒りが宿っていたのだ。
「知らなかった?私、スィーラと友達になったの」
「……それは、知ってるけど」
「大事な友達が散々言われて、怒らない方がどうかしてるわ」
その怒りは、ジークに対してのものではない。
友達を泣かせた街の人々へと向けて。
友達を絶望の底にへと突き落とした、憎むべき人々に向けて。
ジークの歪な思考から
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