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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 傷跡
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るがそれでも十分白い肌……



「おねが、い」



 分厚い雲が晴れ、綺麗な星が輝きだしていた瞳は……赫く、紅く鈍く輝き……


「ころ、して」



 死徒となったユキが……そこにはいた。







 頭がグラグラと揺れている。煙が目に掛かったのか、前がよく見えない。だからだろうか……目の前にユキに似た少女がいるように見える。ユキに似た少女は、今にも倒れそうな様子で、こちらに向かって歩いてくる。何かを求めるかの様に手をこちらに伸ばし、必死に声を掛けてくる。
 聞こえる声は煙で喉がやられたのか、微かにかすれている。かすれているその声も、ユキの声によく似て……ッッ!!




 違う……違う、違う違う違う違う違う違う違う違うッ!!



 ユキが……ユキがこんなところにいるはずが……っ!!

 

 なん、でだ……何でだっ……何でだッ!!




  先程整えた筈の息が荒れる。落ち着いていたはずの心臓が激しく脈打つ。燃え盛る炎の海の中、音を立て激しく呼吸をしているせいか、口の中の水分が抜け、喉がカラカラに乾く。ひりつく唇を動かし、ゆっくりと目の前にいるそれに声を掛ける。

「ユ、キ、か?」

 士郎の声が聞こえたのか、ユキは足を止めた。 
 僅かに目が見える程度しか上げていなかった顔を、ユキはゆっくりと上げていく。辺りに煙が漂ってはいるが、十メートル程離れた位置で立ち止まったユキの顔を見間違えるわけもなく。華奢な身体に身に付けた服も、服から伸びる腕や足、顔も煤で黒く汚れている。

 いや……違う……

 煤はそんなにドス黒く……赤黒くはない……

 あれは……煤なんかじゃない……

 あれは……

 血だ……


「どうして……ここに」

 士郎が喉の奥から絞り出すように声を出すと、泣き笑いのような顔を一瞬浮かべたユキは

「……殺して、シロウ」

 囁くように小さな声で訴えかけ……士郎に襲い掛かっていった。
 土を空に巻き上げ、たった一歩で十メートルの距離を踏み潰したユキは、熱された空気を裂きながら、振り下ろす右手を士郎の脳天に叩き込もうとする。赤い髪を数本犠牲にし、ユキの攻撃を避けると、一旦距離を取るため、後方に飛ぶが、ユキは影のように張り付き離れない。

「なっ」
「……」

 先程までの食屍鬼とは比べ物にならない動きをするユキに、士郎は驚愕の声を上げる。先程の苦しげな様子は消え。初めて会った時を思い出す、感情の見えない瞳で逃げる士郎を捉える。初めて会った時と違うのは、瞳の色が黒ではなく赤いと言うことだ。

「くそっ」
「……」
  
 次々と腕を振るい、士郎の命を狙うユキ。それを体捌きで避け、
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