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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 傷跡
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ちょっと調べものがあってな」
「……そう」
「どうかしたか?」
「……シロウはいつまでここにいるの?」

 ユキの声はいつもの如く平坦だが、不安気に揺れている。それに士郎は気付いていたが、指摘することなく士郎は答える。

「そうだな……あと、二、三日くらいかな」
「……調べものが終わるの?」
「まあ、そういうことだな」
「……そう」

 今にも消えてしまいそうな程、儚い様子を見せるユキの姿に、そこにいるのを確かめるように、士郎が手を差し伸べる。手が触れたユキの身体は、その名の如き雪のように冷たかった。
 士郎の手が触れると、まるで電気を流されたかのように、びくりと震えるユキ。それでも、士郎に振り返ることはなく、沈みゆく太陽に顔を向けている。

「……どうした」
「……仕事がある……帰ろう」
「お、おい」

 士郎の手を振り払うことなく、ただ、その場から離れることにより、士郎の手から逃げ出したユキは、結局士郎に振り返ることなく、家に向かって歩いていく。
 しかし、後ろを向く一瞬、士郎の目に入ったユキの顔は、

「……ユキ」

 泣いていた。
 
 




 
  


 ユキが自分の家に士郎を泊めること対し、士郎に一つだけ約束をさせた。それは、決して夜に村にいかないということだった。何故そんなことをと士郎は頭を捻ったが、やはり、何も浮かぶものはなく。ただ、黙って頷き了承した。
 しかし、今士郎はその約束を破って夜の村にいた。


 そもそも士郎が元々この国に来たのは、とある魔術師を探すためであった。その魔術師は封印指定の魔術師であり、分かるだけでも、千人を越える人間をその実験で殺していた。派手な実験をいくつも行っているにもかかわらず、全く隠す気のない行動から、随分と昔から魔術協会から追われていた魔術師であった。その魔術師がこの国にいるという情報を魔術協会が手に入れ、探索を士郎が請け負った。正確には時計塔で学んでいた、士郎の師匠でもある遠坂凛が命じられたのを、士郎が代わりに受けたのだ。何故、遠坂がそんな命令を受けたのかは知らないが、遠坂に危険な目を合わせたくないことや、外道な魔術師を放って置けるわけがないとのことから、半ば無理矢理、士郎が顔を突っ込んだのだ。
 遠坂はいい顔はしなかったが、必ず無事で戻ることを約束させた後、渋々了承した結果、士郎は今この国にいるのだ。




 この国に着き、とある村に訪れると、士郎は食屍鬼(グール)となった村人に襲われた。並みの食屍鬼(グール)ならば軽く返り討ちに出来るだけの実力派あったのだが、襲ってきた食屍鬼(グール)は普通ではなかった。姿形行動はただの食屍鬼(グール)であったが、その動きや行動は明らかに食屍鬼(グール)ではな
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