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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 傷跡
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 闇の中に沈む小さな家屋に、士郎が倒れ込む。男は死んだようにピクリとも動かない。不意に士郎の指先が動いたかと思うと、士郎はゆっくりと床に手を付き身体を起こす。壁にしがみつきながら立ち上がると、シンと静まり込む家の中で士郎は声を上げた。

「ま、もる……マモル……ッ……マモルッ! どこだっ!」

 壁に手をつき、灯りのない中を進みながら、士郎は必死に呼びかける。

「マモル……マモルッ! マモルッ!!」

 しかし、その呼び掛けに応える者はなく……

「どこだっマモルッ!! どこにいるマモル――ッ!!」

 ただ虚しく響くだけであった……。














 



 

 ただ……見ているだけしか出来なかった
 

 手で触れることも


 声を掛けることも出来ず


 ただ……見ていることしか


 彼の苦しみを


   怒りを


   嘆きを
  

   悲鳴を


 ただ……見ているだけで……


 身体が


 心が


 凍え


 凍っていく彼に


 せめて一時だけでもいい


 一瞬だけでもいい


 温めてあげたい



 あたしの微熱は


 きっと


 そのためにあるのだから 
  








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