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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 傷跡
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ギリギリの雨のベールは、燃え落ちた村を僅かに隠す。時折ベールの切れ目から、足を引きずるように歩む黒尽くめの男の姿が見えた。その姿はまるで幽鬼。目を離せば消えてしまいそうな程、余りにも存在感が薄い姿は……しかし、一目見た瞬間。背筋を凍らせ、言いようのない不安を掻き立てさせる。
 視界の端々に焼け焦げた死体が転がる、死が充満する世界を、黒い男……士郎は歩いていた。




 ――――――ユキは何か夢とかあるのか?―――――

 ――――――別に……特にない――――――

 ――――――そうか……――――――

 ――――――マモルと一緒に居られたらいい――――――

 ――――――そうか――――――


 今にも崩れ折れそうな程、よろめきながらも歩く士郎は、口の中で何かをブツブツ呟いている。

 虚ろに揺れる瞳は、何を見ているのか……


 ――――――シロウはあるの?――――――

 ――――――何がだ?――――――

 ――――――夢――――――


 震える腕をゆっくりと持ち上げる士郎……
 

 ――――――……夢……か――――――

 ――――――あるの?――――――

 ――――――まあな……――――――

 ――――――それは……何?――――――

 ――――――……正義の味方だ――――――


 それは……誰かを助けるために伸ばされた手のようであり……
 

 ――――――正義の……味方? 何それ?――――――

 ――――――そうだな……困っている人や助けを求める人を救う者のことだ――――――

 ――――――人を……救う? シロウはそれになりたいの?――――――

 ――――――ああ――――――

 ――――――……そう……――――――


 何かを求めているかのようであり……

 
 ――――――やっぱりおかしいか――――――

 ――――――いいえ……そう……正義の味方……――――――

 ――――――どうかしたか?――――――

 ――――――シロウ――――――

 ――――――何だ?――――――

 ―――――正義の味方は……助けを求める人を救うのよね……―――――

 ―――――ああ――――――

 ―――――そう……シロウなら……きっとなれる――――――

 ―――――……そうか――――――

 ―――――……なって……――――――

 ―――――ん?――――――


 救いを求めるかのようでもあった……






 ―――――正義の味方に……なって……シロウ―――――

  


















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