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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
幕間 傷跡
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に度力を込め起き上がると、少女の手を掴んだ。少女はその細い体を思わせない力強さで、男の身体を駱駝の上に引っ張リ込む。何とか駱駝の上に乗れた男が、前に乗る少女を見ると苦笑いを浮かべた。

「意外と力持ちなんだな」
「……」
「色々とすまない……それで、この駱駝はどこに?」
「私の家」

 振り返らず、抑揚のない声で答える少女。

「そ、そうか……それで君は」
「……ユキ」
「え?」
「私の名前」
「そうか……ユキ、か……綺麗な名前だな。俺の名前は――」


 栄養状態が悪いのか、環境が悪いのか、少しパサついているが、それでも十分艷やかと言える黒髪を揺らしながら、振り向く少女を見下ろし、男は言った。


「――衛宮士郎だ」 












 頭上に振り上げた鍬を、硬く乾いた地面に打ち付ける。水分が全て抜け、コンクリートの様に硬い大地を、まるでビスケットの如く易々と男……士郎は耕していく。振り上げては振り下ろす、振り上げては振り下ろす。雲一つない空に昇る日の光は、直接士郎の身体に降り注ぎ、容赦なく身体を炙っていく。止めどなく流れる汗を時折拭いつつ、士郎は荒れた大地を耕す。
 どれだけそれを続けていたのだろうか、太陽の位置が変わる頃、士郎は鍬を転がし、近くに転がる岩の上にどっかりと腰を落とした。

「ふううぅ〜……あっつ」

 ぐったりと蒼い空を見上げ、溜め息のように息をつく。岩の影に置いていた水筒で喉を潤すと、もう一頑張りと膝に力を入れ、立ち上がろうとすると、

「おお〜い……」

 熱でゆらゆらと揺れる陽炎の向こうから、一人の少年が声を掛けながら歩いてくる。士郎の目の前で、少年は足を止めると、水でも浴びたのかと思うほどぐっしょりと汗で濡れた顔を上げる。息を切らし、肩を上下に揺らしながらも、士郎を見上げる顔は満面の笑顔を浮かべている。

「シロウ。姉ちゃんのお弁当持ってきたから飯にしよう」

 膝に片手をつきながら、少年はもう一方の手に持った、所々染みが目立つ布で包まれた弁当を差し出した。無邪気な笑みを向ける少年に、士郎も笑顔で返事をする。

「ああ、そうだなマモル。お昼にしようか」
「よっしゃ!」




 士郎が耕していた畑もどきの近くに生える木の木陰に移動し腰を落す。マモルと向かい会うように座った士郎は、差し出だせれた弁当を受け取る。目の前に座るマモルは、士郎に弁当を渡すや否や、自分の弁当を開き、早速食べ始める。貪るように食べるマモルの様子が微笑ましく、思わず顔を緩める。日に焼けた浅黒い肌、黒い髪に黒い瞳。彫りの浅いその顔つきから、日本人に思えるが、それは半分当たりだそうだ。マモルと言うこの少年は、ユキの双子の弟で、現地人と日本人とのハーフと言
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