第十四話 それでも姉妹
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!」
雷が大きな声で言った。
「そ、そうね、じゃあ・・・ゴホン!」
暁はわざと大きな咳払いをすると皆を見まわした。
「とにかく大切な仲間が離れることは寂しい事ですけれど、夕立、そして先輩方の無事を祈って、皆で乾杯しましょう。」
皆はお互いのコップやグラスや湯飲みにそれぞれが好きな飲み物を注ぎあった。もちろん中身はノンアルコールだった。
「夕立、今までありがとうね。そして気を付けて、頑張ってきてね!!」
『乾杯!!』
駆逐艦娘の言葉が和し、グラスが小気味いい音を立ててぶつかり合った時、ピアノの音色が風に乗って聞こえてきた。
桜の木が囲むような格好になっている小さな空き地に特設ステージが設けられ、そこに大きなピアノが置かれている。手入れを怠らなかったと見えて、ピアノは黒々と光って綺麗だった。
紀伊は指をピアノの上に置いた。もう楽譜は用意してある。こういう時どんな曲を弾けばいいのかずいぶん悩んだが、一人ぼっちで横須賀にいた時あの人が教えてくれた曲から選ぼうと決意していた。
一呼吸すって、紀伊はゆっくりとピアノに指を滑らせ始めた。
「ショパンのノクターンね。滑り出しの曲としてはいいほうじゃん。」
鈴谷が満足そうに目を閉じながらつぶやいた。
「ええ・・・・本当に癒されますわね・・・・。」
熊野は鈴谷の肩に頭をもたせ掛けながらつぶやいた。
「熊野も弾けばよかったじゃん。去年は弾いてたのに。」
「わたくしだって、たまには別の方の演奏も聞きたくなりますのよ。」
そう言った熊野は目をつぶり、心地よさそうなと息を吐いた。その隣では利根がほうほうと感心したような声を上げている。
「ふうん、これがピアノというものか。吾輩にはちと難しいものだな。」
「姉さん、こういう時は黙って聞くものですよ。」
筑摩が注意した。
紀伊の指は滑らかに動き、曲はノクターンからリストのラ・カンパネラに移っている。
「癒されるなぁ!」
ほうっとと息を吐きながら長良は一言感慨深げに言った。
「少しは音楽に興味を持ちましたか?」
由良は笑いを含んだ目を向けた。
「ううん、ちょっとだけね。私は体を動かしている方が好きだもの。でも、ランニングしながら聞くのもいいかな。どっかにウォークマンみたいなの、なかったっけ。」
「ありますけれど、それは後ででもいいでしょう。折角の機会なんですからゆっくり聞きましょうね。」
「うん。」
長良は素直にうなずくと、シートの上で膝を抱え、じっとピアノ奏者を眺めた。
「不思議ですね。こんなにも安らかな気持ちになれるなんて。」
あれほど食べたにもかかわらずいつもと変わらない様子だった。赤城と加賀は二人ならんでシートの上にひざを抱え、小高い丘の上から紀伊の演奏を見下ろしていた。風に乗っ
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