×××だと、彼女は―――
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動きに目をやりながらぶつぶつと何事かを呟く。
「よし、出来た」
案外早く出来上がった。
「オレがコイツ等地面から引っ張り出すから、ミラは飛んで上から攻撃してくれ」
―――――あの依頼を受け、無事に終わらせたあの日から一年。
ふとそんな出来事を思い出していたミラの視界に、見慣れた赤が入ったのはそんな時だった。
「よ、ミラ。おはようさん」
「…おう」
いつものようににこやかに、好かれやすそうな笑みを浮かべてひらりと手を振ったアルカに、自分でもちょっと驚くくらいぶっきらぼうな声で返す。思いがけず出てしまった無愛想な声に、僅かな不安を覚えてちらりと目をやれば、彼は特に気にするでもなく、さも当然のようにミラの向かいに腰かけた。
「……」
「…ん、何?寝癖ついてる?」
「別に」
「そうかー?ならいいんだけどさ」
じっと見ていたのに気づかれたらしい。今日も元気にぎゃあぎゃあと喧嘩するナツとグレイを面白そうに見物していた目がこちらを見て、頬杖を付いていた右手が赤髪を撫でる。
その目がまた別の方に向くのを確認して、また彼を見る。燃えるような真っ赤な髪に、白すぎず焼けすぎてもいない肌。雑誌にイケメン魔導士として取り上げられるレベルには整っている顔立ちに、細いが必要最低限には鍛えているであろう体躯。見た目だけみれば実年齢より大人びて見えるのに、口を開けば年相応の少年らしい無邪気さも持っていて。
毛嫌いしていたあの頃に比べれば幾分か素直に感情を出すようになったアルカの視線の先を何気なく目で追って、それから後悔した。
(また、というか……やっぱり、というか)
つり気味の黒い目が見つめる先。そこにいるのは自分であったり自分の弟妹であったり、彼と同居する緑髪の少年であったり、ギルドの仲間であったりして、けれど誰よりその視線を受けるのは、二つ下の青い髪の少女だった。
(確かにティアは可愛いし。性格は…いいとは言えないけど)
誰とでも距離を置く彼女は、距離を置きたいにも拘らず誰からも好かれる女の子で。
その見た目の印象をぶち壊す口の悪さと無愛想さはあるけれど、肝心な時は巡り巡って誰かの為に最低限の動きで最大限の結果を叩き出す。ギルドの事だって内心では大事に思っているのをミラを始め皆が知っているし、人付き合いに対して不器用なだけで、ちゃんと真正面から接しようとしているのだって解るのだ。
そんな彼女を時に年上らしく可愛がり、時に強者を見上げるように敬愛しているのを、ずっと前から知っている。
(強くて、優しさもあって、可愛くて)
そんな彼女に、勝ち目なんてない事も。
(好き、なんだろうな。アルカは、ティアの事)
それを解り切った上で、好きになってしまった
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