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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十三話 道を切り開く者
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ハイマーの言葉に皆が、絶句していたブラッケも表情を改めた。
「準備は出来ている。しかしエルスハイマー、上手く行くと思うか?」
「ブラッケ、上手く行く必要は無いんだ。今回は行なう事に意味がある」
本当に心配しすぎなのだろうか。ブラッケの心配は杞憂なのだろうか。ヴァレンシュタイン司令長官は今は改革の推進者の顔をしている。しかし司令長官がその顔を捨てた時、私達は一体どうすべきだろう……。
帝国暦 487年9月 21日 オーディン ゼーアドラー(海鷲) ウルリッヒ・ケスラー
「一年前はこんな日が来るとは思わなかったな」
グラスを口に運びながらワーレン提督が呟いた。その言葉に同意するかのようにミュラー、クレメンツ、ルッツ、ビッテンフェルト、アイゼナッハが頷く。
「一年前か、思い出すな、第五十七会議室を」
「クレメンツ提督、俺は今でも第五十七会議室に行く事がある。あそこから全てが始まったと思うと、どうもな」
クレメンツとビッテンフェルトが言葉を交わす。二人とも感慨深げな表情だ。いや、二人だけではないワーレン、ルッツ、アイゼナッハも同じ表情をしている。
第五十七会議室。一年前、ヴァレンシュタインは其処に九人の少将を集めた。ケンプ、ルッツ、ファーレンハイト、レンネンカンプ、クレメンツ、ワーレン、ビッテンフェルト、アイゼナッハ、メックリンガー。
その九人とヴァレンシュタインが第三次ティアマト会戦を勝利に導いた。そして今、帝国軍宇宙艦隊の中核を担っている。帝国軍人なら誰でも知っている話だ。
「すまんな、ケスラー提督、ミュラー提督。つい思い出してしまった」
「構わんよ、クレメンツ提督。第五十七会議室の事は軍人なら皆知っている」
私の言葉にミュラーが穏やかな表情で頷いた。
軍内部では第五十七会議室は有名になっている。それまで非主流派だった人間たちが、第五十七会議室に呼ばれることで運命を一変させた。今では日常会話の中でも第五十七会議室という言葉が使われる。運命の転機と言う意味で。
話題を変えるべきだと思ったのだろうか。ルッツがビッテンフェルトに問いかけた。
「司令長官にマントの色を黒にと勧めたのは卿だそうだな、ビッテンフェルト提督」
「まあ、そうなるのかな、あれは……」
妙な事にビッテンフェルトは口ごもった。常にはっきりしたもの言いを好む彼にしては珍しいことだ。自然と彼に視線が集中した。その視線を感じたのだろう。困ったように話し始めた。
「最初は白を勧めていたのだ、俺は」
「白?」
ミュラーが不思議そうな声を出す。皆も顔を見合わせている。確かに白と黒では全く違う。
「うむ。しかし司令長官が白は副司令長官に譲ると言われてな。ブリュンヒルトも白だからそのほうがいいだ
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