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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十三話 道を切り開く者
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人かが頷く。改革の開始を告げる勅令は十月十五日に発布される。

本来ならもっと早く勅令を出せた。改革案の骨子は既に出来ていたのだ。しかし軍の編制が終わっていなかった。シャンタウ星域の会戦は帝国の大勝利で終わったが、無傷で勝ったというわけではない。十月十五日の発布は止むを得なかった。

今回の勅令では先ず、帝国が一部の特権階級の権力の私物化により疲弊している事を訴えた後で、改革を行なう事でこの後千年の繁栄を帝国にもたらす事を宣言することから始まる。

具体的な改革の内容は、以下の六点からなる。
1.貴族に対する課税の実施
2.貴族を対象とした特殊な金融機関の廃止
3.農奴の解放
4.解放農奴を対象にした農民金庫の創設
5.間接税の引き下げ
6.刑法、民法の改正

このうち1〜3は貴族の財力を奪うことが目的だ。財力が無くなれば彼らが持つ強大な軍事力は維持することが出来なくなる。彼らが持つ政治的な特権も力があればこそだ。力を失えば特権も失う。

解放された農奴はそのままでは難民になりかねない。それを救うために設置されるのが4の農民金庫だ。その財源は2の貴族を対象とした特殊な金融機関の廃止によって確保される。

2の金融機関だが、これははっきり言って酷い。帝国政府から運営資金が出ているのだが、無利子、無担保、無期限などというとんでもない融資をしている。民間ではありえない。

もちろん上限はある。また借りられるのも個人ではなく、家で借りる事と限定されている。貴族たちは金銭面で困った場合は先ずここを頼る。民間の金融機関はその後だ。この金融機関を無くす。当然融資した金は返してもらう事になるが大騒ぎになるのは間違いない。

5、6は平民対策だ。貴族から課税する事で税収は上がる。その分間接税を下げる事で物価を下げ、生活面での負担を下げる。貴族が課税に反対すれば当然間接税も下がらない。平民達の反感は爆発するだろう。

6はこれからは公平な裁判を実現する法改正を行なうという宣言だ。実際に法改正を行なうのは内乱の終了後になる。

これは改革の第一歩だ。これから新しい国造りが始まる。そう思うとなんとも言えない高揚感に体が包まれる。隣のブラッケがグラスのウィスキーを一気に飲み干した。

「おいおい、大丈夫かブラッケ、そんなに飲んで」
「大丈夫だ。今日は気分が良い。酒が美味いよ」
その声に周りが反応した。皆が不思議そうにブラッケを見る。

「珍しいなブラッケ、どういう風の吹き回しだ」
ブルックドルフがブラッケに笑いながら話しかけてきた。ブルックドルフの言うとおりだ。今日のブラッケは少しおかしい。

ここ最近のブラッケは不満そうだった。彼は貴族を内乱で潰してから国内改革をするべきだと考えていたのだ。少なくともこの改革案を
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