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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
最後の物語:軋む在り方
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て下さいねぇ。買ってあげますからぁ」
「え、でも…………いいの………?」
「お姉さんの財力をナメちゃダメですよぉ? それにぃ、一緒に暮らすんですから遠慮もダメですからね〜? 好きなのを選んでいいんですよ〜?」
「おぉ………!」


 よく解らない声を漏らしたみことに、ピニオラは笑顔のまま首を傾げる。
 変わった癖ではあるが、これもまたみことの一面として記憶に書き留めるや否や、幼い同行者は喜び勇んで服屋という広大なダンジョンの最奥へとまっしぐらに駆け出していった。奥にはまだみことの年齢では縁のない下着が並んでいるのだが、飽きれば自分の着るものを選ぶだろう。衣服を新たにするみことの姿を想像しながら、手持無沙汰に店内を散策する。どうせ来客はない寂れた店だし、索敵スキルもあるから行方は追える。迷子になろうと問題はない。多少の冒険気分はささやかな贈り物とすることにした。


「くふふ、やっぱり女の子ですねぇ〜」


 ようやく落ち着いて年相応にはしゃぐみことを見送り、たまには自分にも何か見繕おうと陳列された衣服に視線を向ける。
 基本的に目的が無い限りは夜しか出歩かないためか、それとも自分の趣味なのか、装備は黒系統に偏ってしまっている。普段と異なる心持だからこその思わぬ意欲に戸惑うことが無いと言えば嘘になるかも知れないが、それでも不思議と嫌ではない。それほどにみことは大きな存在であったのだと図らずも自覚させられる。だが、その認識はまるで思考を放棄したみたいで、ピニオラには引っかかるような思いを抱かせる。みことという観察対象を得たピニオラの歓喜は、その知的好奇心によってこれまでにないほどに満たされた。しかし、その上で理解できないものがあるという事実は不完全燃焼に相違ない。その中途半端な燻りに、ピニオラは苦笑せざるを得なかった。
 僅かばかりの瑕疵に思考を巡らせるのもそこそこに、ピニオラは店内に響くみことの足音に耳を澄ませた。

 ぱたぱたと駆け寄る小さな足音。息を弾ませるくらいに懸命に迫る軽やかな音。
 ………それと、もう一つ。この場に想定していなかった異音。明確に意思を持つ《第三者》の気配を感じ取るも、ピニオラは然して動じることもなくみことを傍に引き寄せる。


「今度は随分とキュートなターゲットじゃないか………お前にもそういう趣味があったとはな?」
「女の子用のお店に来るセンパイも、意外な趣味をお持ちですねぇ〜」


 一見すれば和やかな会話に聞こえなくもない。
 見ず知らずの他人の来訪に怯えるみことを自らのローブに(くる)んだピニオラは、背後から向けられた声――――艶のある男声の主に向き合おうと振り向く。
 次の瞬間、視界に捉えたのは予想に違わぬ男性と視線が合った。
 黒のポンチョを纏った長身痩躯。腰に提
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