第1話 咬傷
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「お、おい!大丈夫か??なあ!しっかりしろ!」
すごく心配そうな顔でこちらを見ているのがわかった。こういう時に限って女の子らしい表情をしやがる。
薄れていく意識の中、視界の端に黒い靄のようなものが一瞬だけ見えた。
そして俺は目の前が真っ黒になった。
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次に記憶があるのは真っ白な病室で目を覚ましたところからだ。
首には包帯が巻かれているがすでに痛みはない。横を向くと俺が目を覚ました事に気付いたからか不気味な笑みを浮かべている桃がいた。
「なんだその顔は?気持ち悪いな…帰れ。お前を見て他の患者が悪化したらどうする。」
「命の恩人にそれは酷いんじゃないの?お前、下手すりゃ大量出血で死んでたんだぞ?」
「そんな大袈裟な…」
そこまで言いかけた時に医者と思われる男が入ってきた。
「大袈裟ではありませんよ。傷は浅いですが血がなかなか止まりませんでしたからね。彼女が通報しなければ本当に死んでいたかもしれません」
「そうなんですか…」
「ほら〜命の恩人に対して言う事があるんじゃないですかーーー?」
「…ありがとよ」
感謝の念を感じてはいるがこいつに対しては素直に伝えるのは癪だ。故に聞こえるか聞こえないかの小声でつぶやいた。
「ん?なんだって?よく聞こえないなぁ」
「とっとと失せろこの馬鹿女と言ったんだ」
「酷いなぁ…」
このやり取りを黙って聞いていた医師が再び口を開いた
「水城さん、どういう状況でこの怪我を負ったか教えてくれませんか?一応小泉さんから大体のことは聞きましたが念のため本人にも聞こうと思いまして」
「そんなこと言われても…特に何もただたんにあの山でこいつと話してたら急に…」
「…小泉さんの証言と一致してますね。実は首筋に咬傷があり、それを調べたのですが…この辺りに生息するどの動物のものではありませんでした。」
「…あ」
そこまで聞いて、俺は気を失う直前に見た黒い靄のことを思い出した
「どうかしましたか?」
「いや…何でもないです。気のせいでした。」
恐らく見間違いかなんかだろう。気を失う直前なら幻覚ぐらい見るさ。
「では何か関係のありそうなことを思い出したら連絡して下さい。血は既に止まっているのでもう帰っても大丈夫です。」
「ありがとうございました」
何か思い出したら、とは言われてもなぁ…
そもそも首筋の状況なんて俺から見えるわけないしな…
そう思いつつ靴を履き、病室を出た。
「この後どうする?」
後ろから付いてきた桃が聞く
「どうもしねぇよ…今度こそ家に帰る。大切な休日なのに面倒なことになったしよ」
「あぁ…そうだよね」
「なんだ?いつもならそんなの無視してどっか行こうとか言い出しそうなのに」
「いや…ほ
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