百五 白の双璧
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麻呂の速過ぎる攻撃にシズクは冷や汗を掻く。吹き飛ばされたギタイがようやくこちらへ来る気配を感じ取って、シズクは油断なく身構えた。脊柱の鞭がしなり、君麻呂が再び攻撃を仕掛けてくるのを警戒する。
しかしながら、シズクの警戒態勢をよそに、鞭は振るわれる事なく君麻呂の手の内に戻ってゆく。
怪訝な顔をするシズクの背後で、澄んだ声が唐突に響いた。
「君麻呂。お前は、もう一人の男のほうを頼む」
「はっ」
言葉少なに会話を終わらせた敵側の人間が、己のすぐ後ろにいる事実にシズクは一気に血の気を失った。
ハッと我に返って飛び退くと、何時の間にか背後で立っていた人物がにこりと微笑む。
愕然と立ち竦むシズクの背中を、先刻君麻呂と対峙した際とは比べ物にならないほどの量の冷や汗が伝っていった。
「…ボクちゃんは、一体、何者なのかな…?」
自然と震える全身を叱咤し、精一杯の虚勢を張ってシズクは問うた。
ボクちゃん、という聞き慣れない呼ばれ方をされた当の本人は、きょとんと眼を瞬かせる。
己の指示通り、ギタイと対峙している君麻呂をちらりと見遣ってから、ナルトは青い双眸をゆるゆると細めた。
「決まっている」
その瞳の奥ではシズクを始め、クスナとセツナ二人の姿をもしっかと捉えていた。
「君達の邪魔者だよ」
沼の国の祠を目指して、白はただ一人森の中を突き進んでいた。
なんとか峡谷を抜けた彼は周囲を警戒しつつも先を急ぐ。木から木へ飛び移りながら全速力で駆け抜けていた白は、不意に聞こえてきた妙な音に気付いて肩越しに後ろを見遣った。
鋭い風切り音と共に、飛来してくる大振りの手裏剣。
敵が放ったのであろう五つの手裏剣がこちら目掛けて飛んでくる。白は紫苑を背負ったまま、後方に向き直ろうとした。迎撃の構えを取ろうとする。
「振り返るな」
瞬間、一つ残らず弾かれる手裏剣。
白が後ろを向こうとした寸前に聞こえてきた声は、彼が心底傾倒する存在のものだった。
「ナルトくんっ!」
「行け」
ナルトの言葉通り、白は振り返らなかった。それだけの信頼と安心感がナルトにはあった。
そのまま走り去る白を視界の端に捉えながら、ナルトは手裏剣が飛んできた方向を探る。木陰に身を潜めている人物がくいっと指を動かすのが見て取れた。
すると、先ほど弾き飛ばした手裏剣が再び飛来する。今度は不規則な動きであらぬ方向から飛んできたそれらに、ナルトは眼を眇めた。
「風遁か…」
「ご名答」
風遁のチャクラを込めた手裏剣をくるくる回しながら、セツナが嘲笑する。
セツナと並行して走るクスナがにやりとこちらを見て同じように嗤った。
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