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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百五 白の双璧
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ばかり安定している足場に飛び乗った。
途端、振りほどくように背中から降りた紫苑は、ナルト達と距離を取って大声で喚き散らす。
「本当に私を守る気があるのか!?さっきから危なっかしい所ばっかり通りおって!!」

ぜえぜえと肩で息をし、裏返った声で叫んだ紫苑が周囲を指差す。彼女の指し示す光景は、確かに普通の人間にはとても通れない険しい道程だ。

高低差の激しい絶壁。谷間に流れ込む川は急斜面で、もはや滝だ。足場と言えば、水中から直立する石柱ぐらいで、その柱と柱の間も数メートルは離れている。
忍びであるナルト達だからこそ跳躍して進める、かなり複雑な地形の峡谷が紫苑の眼前に広がっていた。

「もっと他に安全な道があるであろう!わざわざ、こんな…っ」
「…――敵の連係は火遁を中心にして組まれています。ですから、水源が豊富な道程を選びました」
聊かうんざりとした眼差しで、白が淡々と答える。
「これだけの水があれば反撃もしやすい…。多少、起伏に富んだ地形である事は否めませんが」
「多少!?これが多少か!!」
猶も声を荒げる紫苑を前に、眉間を指で押さえて君麻呂が軽く溜息をつく。


前回巫女の館に襲撃してきた敵――黄泉配下のクスナ・セツナ・ギタイ・シズク。
彼らの連係術で一度痛い目に遭った白と君麻呂は、二の舞になるのを防ぐ為に、この峡谷のルートを選んだのだ。
その選択にナルトは一切口を出していない。彼はあくまでも白と君麻呂の意向に添って行動している。
ナルト自身、複雑な地形の道程を進む事に抵抗も無いし、このような険しい行程ならば、足穂も到底追い駆けてこないだろうと見越しての事である。

足穂とはあの朝陽を迎えた時に別れた。
紫苑の命令に渋々従って別れたようだったが、あのぶんではおそらく別ルートで追って来ているに違いない。暫く行動を共にして理解したのだが、足穂は真面目な上にかなり頑固な性格だ。

何れにせよ、足穂が別の道で沼の国の祠に向かっているのは確かである。紫苑に命じられ鬼の国へ引き返そうとするように見せかけて、屋敷へ続く道とは別の道へ足を踏み入れていく足穂を、ナルトの眼は秘かに捉えていた。


「此処を越えれば沼の国。封印の祠まであと僅かです――今暫くのご辛抱を」
紫苑の言動に苛立つ白と君麻呂に代わって、ナルトがやわらかく諭す。ぷいっと顔を背けて拗ねる紫苑に苦笑を零して、ナルトは白と君麻呂に念を押した。

「…そろそろ襲撃してくる頃合だろう。守備に徹し、独断専行は慎め」
「「御意」」
白と君麻呂が恭しく頭を下げる。それに顔を上げるよう言いながら、ナルトはこちらを窺う気配を敏感にも感じ取って口許に弧を描いた。





ナルトが既に勘付いているとは露知らず、峡谷の陰に潜んでいた黄泉配下の四人衆は紫苑
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