百五 白の双璧
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族嫌悪だと頭の中では理解している。それでも彼ら二人は決して相容れない。絶対に譲れないものが其処にはあった。
だからこそ、白の一言は君麻呂の心を抉るのに十分な殺傷力を秘めていた。
「――ナルトくんを殺そうとしていたくせに…ッ!!」
その一言を言い終えるや否や、ハッと我に返る。完全に失言だった。
視線の先、寸前とは打って変わって真顔になっている君麻呂を見て後悔する。
今のは確実に自分の不用意な発言だった。気まずげに言葉を選んでいる白の耳に、澄んだ声が朗々と響き渡る。
「はい、そこまで」
いつの間に来たのだろうか。
音も気配も無く、口論していた二人の間に自然と割って入ったナルトは、東の空を背に微苦笑を口許に湛えていた。
「夜明けだ。出発しよう」
警護する身でありながら諍いを起こしていた二人をナルトは咎めなかった。しかしながら彼の穏やかな物腰こそが逆に白と君麻呂の頭を急速に冷やしてゆく。
見上げると空は順調に白々と明るんできている。口論に夢中で、朝の訪れに気づかなかった己を恥じ、気まずげに口を閉ざした彼らに、ナルトは何も問わず、ただ出発の準備を促した。
足穂と会話を終えてすぐ、ナルトは白と君麻呂の許へ向かった。夜が明けたので呼びかけようとしたのと、やけに静かな虫と動物に疑問を生じた上での行動だった。
面倒事が起こっていなければ良いが、と微かな期待を抱いていたのだが、その期待はあっさり裏切られる。
もっともナルトが耳にしたのは白の最後の言葉だけだ。しかしながら、君麻呂が常々悔やんでいる過去を回想させる内容に、彼は秘かに眉根を軽く寄せた。ただしその際、ナルトが心の内で抱いたのは、仕方ないなぁ、といった軽い感想だったが。
よってすぐさま素知らぬ顔で白と君麻呂の間に割って入ったのだ。
「……過去は変えられない。でも、」
紫苑を起こしていた君麻呂の耳元で、ナルトは誰にも聞こえぬよう静かに囁く。
弾かれたように顔を上げた君麻呂の視線の先では、ナルトは既に背中を向けて足穂と白の許へ向かっていた。
「過去から学ぶ事で人は成長出来るんだよ」
薄明の空の下、肩越しに振り返って自身を待っているナルトの姿は、君麻呂の眼には太陽以上に輝いて見えた。
(―――――良くも、悪くもね……)
内心自嘲気味に呟かれたナルトの声は誰の耳にも届かない。
辺り一面に立ち上る白い霧。
細かに飛び散る水滴が顔面にかかるのを避けながら、峡谷の合間をナルト達一行は突き進んでいた。轟々と唸る水音に雑じって紫苑の悲痛な叫びが響く。
「や、やめろ!落ちる…っ、降ろせ!降ろせぇえ―――!!」
背中で暴れる紫苑が何度もそう主張するので、ナルトは少し
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