ターン52 鉄砲水とゾンビ軍団
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走って逃げようとするも、足がうまく動かない。疲労の余り膝が震えてまともに歩くことすらできず、どうにかトイレの外に出たところで派手に転んでしまう。その派手な音が、このあたり一帯のゾンビを全員呼び寄せてしまったらしい。
「う、うわぁ……」
さっきの翔で確信したけど、このゾンビ生徒1人1人ははっきり言って弱い。複雑な思考に向いていないのか、どいつもこいつも僕にワンキルされるレベルなんだから全っ然たいしたことない。翔だって本当はもっと強いはずなのに、あそこまで実力が落ちてるんだからお里が知れるというもので、ただあの無尽蔵の体力で自分の被害も構わずデスデュエルを仕掛けてくる人海戦術が厄介なだけだ。それだけに、まんまとその戦略に引っかかっている自分が恨めしい。多分まともに戦えば、僕ですらこの連中に負けることはまずないだろう。だというのに、それをやるだけの体力は僕にはもうない。じわじわと包囲網を狭めてくるゾンビ達の中心で、デッキから1枚のカードを抜き取った。
「こうなったらもう、最後の……ごめんね、毎度毎度こんな仕事押し付けて、さ……」
「デュエル〜」
「俺と勝負だ〜」
「デュエルしようぜぇ〜」
がやがやとうるさい外野を尻目に、そのカードをデュエルディスクにそっと置く。
「霧の王……!よろしくお願い、体育館まで、連れてっ、て……」
文字通り最後の力で、霧の王の精霊を実体化させる。その召喚に今度こそ体力を使い果たして意識が完全に消える寸前、そっと体を抱きかかえられる感触を感じた……気がした。やっぱり僕は駄目だなあ、こうやって助けを借りないとまともに体育館まで行くことすらできないだなんて。そんなことを思いながらも、不思議と安心感に包まれていて。何日ぶりだろうか、何にも気兼ねなく安らかに意識がフェードアウトしていった。
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