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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十二話 十年の歳月
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シュタイン司令長官は何時から考えていたのでしょう、あの改革案を」
私の問いにリヒテンラーデ侯は視線を外すと少し考え込んだ。
「士官学校に入った時からかもしれんの」
「まさか……」
呟くように吐かれたリヒテンラーデ侯の言葉に、私は反論しようとしたが言葉が続かなかった。
「あれの両親が貴族に殺された事は卿も知っておろう」
「はい」
「もう十年になる……」
もう十年……。いや、それとも未だ十年だろうか……。
「では十年間、ヴァレンシュタイン司令長官は考え続けたと国務尚書はお考えですか? しかし、十年前といえば彼は未だ士官候補生でしょう」
私の反論にリヒテンラーデ侯は何の反応も示さなかった。
「……あれは士官学校在学中に帝文を取った。何のために帝文を取ったのかの……」
ヴァレンシュタインは士官学校在学中に帝文を取った。当時有名になった話だ。軍人でありながら、軍には関係のない資格を取得した。広範囲な行政官としての知識……。まさか、そうなのだろうか。
あの時は妙な士官候補生がいるものだと思った。だが、全てはこの日のためだったのだろうか。この十年間、彼は密かに貴族を滅ぼすために力をつけてきたのだろうか。
「一年半前、陛下が病に倒れられた。卿も覚えていよう」
「はい」
「あの時、ヴァレンシュタインにオーディンの治安を任せた……」
「……」
「断らなかったの。たかが一少将の身分でブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を敵に回すことに躊躇わなかった」
「……」
「あの時には、もう戦う準備が出来ていたのかもしれん……」
「まさか……」
声が震えを帯びた……。一少将が帝国の藩屏たるブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を、いや、貴族全体を敵に回してオーディンを内乱から守った。
あの時から貴族とヴァレンシュタイン司令長官は敵対関係になった。私は偶然だと思っていた。だが、あれは必然だったのか……。
呆然とする私に国務尚書は視線を向けると躊躇いながら言葉を出した。
「卿はあれの両親を殺した犯人を知っておるかの?」
「色々と聞いてはおりますが……」
聞いてはいる。しかし本当の所は判らない。貴族社会の噂などそんなものだ。当てにはならない。
「卿の前任者じゃ」
「! まさか」
「事実じゃ。色々とあっての」
そう言うとリヒテンラーデ侯はヴァレンシュタイン司令長官の両親、キュンメル男爵家、マリーンドルフ伯爵家、ヴェストパーレ男爵家、カストロプ公爵家の関わりを話してくれた。
「ルーゲ司法尚書がその一件でカストロプ公を断罪しようとしたのを止めたのは私だ。それが原因でルーゲ司法尚書は辞任した……」
苦痛に満ちた声だった。後悔しているのだろうか。だが何故そんなことを……。聞
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