第三十二話 あちこち回ってその七
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「熊とかが出て」
「熊って」
神戸の長田出身の私にとってはまずこれが想像の範疇を超えています。
「思いきり危ないじゃない」
「まあそうですよね」
熊を出した本人はこんな調子です。
「危ないですよね、やっぱり」
「かなりそうだと思うわ」
そのことはどうしても否定できません。
「田舎っていっても危ないのね」
「まあ夜は出ませんけれど一番危ないのがですね」
「蛇!?」
「それは普通に夜も出ますよ」
そういえばそうです。蛇は元々夜行性ですから。だからこれは普通でした。
「蝮なんかもうちょっと山に入れば道の真ん中ででかでかといますし」
「やっぱり危ないのね」
このことをあらためて実感します。本当に。
「それで夜出ないけれど一番危ないのって何なの?」
「蜂です」
話に出て来たのはこれでした。
「蜂が一番危ないんですよ」
「蜂!?」
私にはこれはよくわかりませんでした。阿波野君の話はどうもよくわからないことばかりですけれどこれは特にでした。蜂が一番危ないってことは。
「蜂があぶないの!?」
「下手すれば死にますよ」
「死ぬって・・・・・・」
話がどんどん物騒になっていきます。話をしていて目が点になってきているのが自分でもわかります。
「蜂に刺されて死ぬの!?」
「死にますよ。スズメバチがですね」
「そうだったの」
今はじめて知った衝撃の事実でした。衝撃というか何といいますか。
「スズメバチに刺されたら死ぬの」
「あれって一説には蠍より危ないらしいんですよ」
「蠍ってあの?」
「そうですよ、熱い場所にいてハサミと毒針を持っているあれですよ」
「そうよね。あれよね」
話を聞きながら頷きます。その蠍です。
「あの蠍よね、やっぱり」
「それと同じ位危ないんですよ」
「ううん、田舎って物凄い危ない場所なのね」
「で、僕はそこにいるんで」
話がそこに戻りました。
「どうです?一回来てみます?」
「遠慮したいわ」
これは本音です。
「スズメバチがいるとなると」
「それでも巣に近寄らないと大丈夫ですよ」
いつものあっけらかんとした調子で言う阿波野君でした。
「その辺りは」
「それでもやっぱり」
「駄目ですか」
「ふそくを言ったら駄目だけれどね」
これはわかっているつもりです。けれどどうしても。
「蜂って怖いのね」
「まあそれはそれこれはこれで」
「いいっていうの?」
「慣れたら何でもありませんよ」
今度はこんなふうに言ってきました。
「実際のところ」
「住めば都っていうの?」
「そういうことです。大体ですね」
「何?」
「僕から見ればですけれど」
少し前置きをしてからの言葉でした。
「先輩寮に住んでおられますよね」
「それはもう
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