第十七話 旅立ちその十一
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「笑顔でね」
「お別れだね」
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「ええ、またね」
「うん、またね」
三人は笑顔を浮かべ合ってだった、そうして。
そのうえで別れた、手を振り合ってから優花が新幹線に乗ってだ。
新幹線が出発する時にも手を振り合った、龍馬は優子と共に新幹線が駅を出発するのを見届けてから優子に言った。
「あいつ、今から」
「ええ、生まれ変わるというかね」
「変わるんですね」
「そうなるわ」
男から女にというのだ。
「そうなってくるのよ」
「そうですね」
「考えてみればね」
優子はこうも言った。
「本当に暫くどうしようもない位に悩んだわ」
「お酒かなり飲まれたそうですね」
「そうよ、どうしていいかわからなくて」
肉親である姉としてだ。
「辛かったわ、けれどあの子はあの子なのよ」
「女の子になっても」
「心は変わらないのよ」
「ですよね、俺も驚きましたけれど」
優花自身からその話を聞いてだ、龍馬は彼の告白を受けた時のことを思い出しつつ優子に言葉を返した。
「それでもですよね」
「あの子はあの子でしょ」
「身体がどうであっても」
「そう、人は二つなのよ」
ここでこうも言った優子だった、二人で優花の新幹線を運んだ線路、何処までも続く様なそれを見ながら。
「身体と魂でね」
「二つで一つですね」
「どちらが重要かというとね」
「魂ですよね」
「そう、そちらなのよ」
どちらが大事かというと、というのだ。
「身体がなくなっても魂は残るでしょ」
「そうですよね」
「魂は身体から出ることもあるし」
「それが幽霊ですね」
「生霊もあれば死霊もあるわね」
「身体から出た魂が幽霊ですね」
龍馬はよく言われる存在についても言った。
「そうですね」
「そうよ、身体がなくてもね」
「魂は、ですね」
「存在するのよ、つまり」
「魂がどうかですね」
「そう、心がね」
ここで優子は魂をこう言い換えた。
「どうかなのよ」
「魂がどうかですね」
「そうよ、だからあの子もね」
「身体がどうであってもですね」
「心があの子なら」
そうであればというのだ。
「あの子なのよ」
「その通りですね」
「そのことがわかったから」
「優子さんも悩まなくなりましたね」
「そうなったわ、だからね」
「こうしてですね」
「見送られたわ」
今の様にというのだ。
「笑顔でね」
「そうですね、俺もです」
龍馬もだとだ、彼は優子に笑顔で言った。
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