第十七話 旅立ちその八
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「楽しくね」
「過ごせばいいんだね」
「女の子になって」
それからもというのだ。
「あちらの高校に通っても」
「一人暮らしをしても」
「楽しく過ごしてね」
「どんな状況でもだね」
「貴方は一人じゃないし」
このこともだ、優子は優花に言った。
「だから長崎でもよ」
「楽しくだね」
「過ごしてね、何かあったら連絡してね」
「うん」
優花は姉の気遣いに応えた。
「そうさせてもらうね」
「絶対によ」
「携帯があるしね」
「それがあるから」
電話、文明の利器であるそれがというのだ。
「何時でも連絡してね」
「俺にもな」
龍馬も言ってきた。
「そうしてくれよ」
「うん、龍馬にもね」
「何時でも待ってるからな」
「その言葉に甘えていいんだね」
「甘えるとかじゃないだろ」
微笑んだ言葉での返事だった。
「俺達の場合はな」
「いつも一緒にいたから」
「だからな」
親友同士だからというのだ。
「そういうことを言ってもな」
「今更っていうんだね」
「そうだよ」
まさにという返事だった。
「そんなことはな」
「もうだね」
「言うまでもないだろ」
「それじゃあ」
「俺も連絡するからな」
「姉さんもね」
二人の方からもというのだ。
「一方通行じゃないわよ」
「お互いに連絡していこうな」
「じゃあね」
優子は二人の気遣いに頷いた、そうした話をしながら神戸の街を見た。朝の神戸はまだ車も人も少なく穏やかだ。
だが次第にだ、時が経つにつれてだった。
車も人も増えてだ、こうしたことを言ったのだった。
「人が増えてきたね、車も」
「そうね」
「起きてきたみたいだね」
「街がね」
「そんな感じだね」
「ええ、街も寝るのよ」
優子は微笑んで優花にこう返した。
「夜はね」
「起きている人がいても」
「そう、それで朝になったらね」
「街として起きて」
「今みたいになるのよ」
そうなるというのだ。
「それが今なのよ」
「そうなのね」
「そう、神戸の街も今まではね」
「寝てたんだね」
「そして起きてきてるのよ」
「成程ね」
「誰でも寝るのよ」
街もというのだ。
「それぞれね」
「そういえば信号もね」
「夜は停まったりするわね」
「二十四時間のところもあるけれどね」
「寝てるね、信号も」
「そう、ただそこでコンビニとかは言わないでね」
くすりと笑ってだ、優子は弟に前以て断った。
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