巻ノ四十九 立花宗茂その十
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「殿、お元気そうですな」
「筑前でもよきことがありましたな」
「お顔に出ていますぞ」
「うむ、筑前のことを調べられてな」
幸村は十勇士達に満足している顔で話した。
「そしてな」
「しかもですな」
「よき方にお会い出来た」
「そうなのですな」
「そのことは後で話そう、ではな」
幸村はあらためてだ、十勇士達に話した。
「これより行くぞ」
「島津家にですな」
「これより行く」
「そうしますな」
「共にな、それでじゃが」
ここでだ、幸村は。
これ以上はないまでに強い顔になってだ、十勇士達にこう言った。
「これより我等は日向からじゃ」
「大隅、薩摩とですな」
「島津家の領国に入りますな」
「いよいよ」
「そうじゃ、だからな」
その声で十勇士達に語るのだった。
「ここはじゃ」
「これまで以上にですな」
「気を引き締めていく」
「そして気を抜かず」
「調べていきますな」
「島津家の者は目も耳もよいという」
その両方がというのだ。
「だからどれだけ変装していても言葉を薩摩にしていてもな」
「それでもですな」
「少しでも怪しいと思われれば」
「それで見破られる」
「そうなりますな」
「見破られれば斬られる」
そうなってしまうというのだ。
「我等ならばその難は容易に逃れられるが」
「しかしですな」
「見破られればそれで終わりですな」
「調べることが出来ぬ」
「三国を」
「そうじゃ、だからじゃ」
それで、というのだ。
「用心に用心を重ねていくぞ」
「はい、さすれば」
「全く気を抜かずに行きましょう」
「ここは」
「そうじゃ、わかったな」
こう念を押してだ、そしてだった。
幸村は十勇士達を連れてだった、彼等と共に島津家の領国に足を向けた。その時ふと岩屋城の方を振り向いた。
その城を見てだ、幸村はこうも言った。
「小さき城じゃな」
「これでは多くの兵は入りませぬ」
「大軍が来れば一揉みですな」
「それで終わりますな」
「そうなりますな」
「うむ、島津家の大軍が来れば」
まさにというのだ。
「簡単に攻め落とされるわ」
「高橋紹運殿がおられますが」
「それでもですな」
「あの方が守られていても」
「落城しますな」
「そうなる、ではな」
それではというのだ。
「この城を観るのはこれが最後やも知れぬな」
「ですか、島津家がこの城を攻めれば」
「その時はですな」
「それで終わりですな」
「うむ、そうなる」
間違いなくというのだ。
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