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ネフリティス・サガ
第四話「王国の陥落」
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そしてこの物語は始まる。
 竜の女王は、それから何千年もして、誇り高い人間の王と結婚した。
翡翠の国は、《古き盟約》古き盟約を伝えながらもう何千年という時を生きた。
 そして竜の女王と人間の王アル・イズウェルの元に子供が生まれた名をアルセイユ・エレスティアという。二人の名を一つずつとってなずけた。自然と人と生物それまでにあったいろんなものを愛するように。またそれらに愛されるように。
 アルセイユは、きらきらした少年としてすくすくと育ち、エレスティアの竜の血のせいか髪は赤く燃える様でした。日を浴びると透き通ってそれが夕焼けの黄金色にもにた色合いをかもし出すのです。
 そんなアルセイユが十六歳の時です。
 夜遅くなんだか目が覚めてしまったアルセイユは、おもむろに自分のベッドから降りてそしてとぼとぼと母が恋しくなって母の元へと向かいました。たぶん、母のベッドでまだ寝ていたいという幼心からでしょう。
 そして母の眠る寝室へ向かおうとした。
 それが物語の始まりだ。
それからしばらく経ち―

ですがやはりアルセイユの心には寂しさが残りました。
昔、アルセイユが子供の頃は王も王妃も優しく愛情深かったのですが。成長したアルセイユも何度も二人から王子としての責務と我らがどんなにおまえを愛しているかを聞き覚えるほどにとうとうと語り聞かせられていたから耐えられたのだのです。
ある時、今夜ばかりは例のあの寂しさがこみあげてきて。
それで眠けまなこに母の元へただ恋しくて向かったのでした。
 しかし、その目には涙の後が残っていました。両親と離れて寝るようになってこの広い部屋に一人だけでいる時はつい、寂しさに涙することもあるのです。十六歳になったといってもやっと十六歳になったといったほうがいいそういうところもあるといえばあったのです。
ご存じのとおり、アルセイユの血には母の竜の血が流れている。その分自分も成長するのも人より遅い。なので16歳といえども10歳の少年と変わりないのです。
 それもあって町の子供たちとなじめなかったりします。仕方なくアルセイユは、森に深く入って獣や鳥たちと遊ぶのでした。
 しかしそれも今日で最後かもしれない。十六歳にもなれば王としての勉強や武術訓練などがいっそう厳しくなる。
 母エレスティアはいつも反対しているが今の情勢を知る夫アル・ヴェストルは戦の時にふくあの独特の風を北から感じていました。
 戦乱の匂いが北の寒い風に乗ってくる。こんなことがいつの頃からかそここで噂されるようになりました。そしてそれを国の者たちが話すと決まって最後に出てくるのがこの国が始まるころから生きている竜の女王エレスティアの存在で終わる。
 アルセイユにとってはいつも笑顔でやさしくきれいな一番の母親なのだが、この国では彼女こ
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