第四話「王国の陥落」
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ないようにわたしたちが見てますから、大丈夫ですから。王子ありがとう、手をずっと握っててくれて、私……この国に生まれてよか……った」
エレンさんは静かに息を引き取った。そして寝ぼけてた頭がやっと理解した。ぼくは今戦争の真っ只中にいるということを。
エレンさんが死んで手から温かさがなくなってとっても冷たくなった後エレンさんの手が勝手に僕の手を離した。それは死んで硬くなった手がぼくの少しの油断からぽろりと外れたからだった。だけど僕は、エレンさんがもういっていいよって言ったように聞こえた。
そうだ、お母さんの所へ行くんだ。
「エレンさん、ありがとう」
どうしてか、エレンさんの死に顔が笑い返したように見えた。それほど、安らかな死に顔だったから。
東の大望遠鏡室、ここもドアが粉々になって、兵士が二人倒れている。二人とも顔なじみのトレトとエリックという仲の良い兄弟だ。 しかし反れもつかの間、六角形の部屋の一角が吹き飛んでそこから、飛行戦艦の砲門がこちらを狙っている。しかし、戦艦は、聞いたこともないような音を鳴らしはじめた。うぉーんうぉーんという機械的な音でそれが、戦艦が飛行を維持できなくなっている警告音だと分かったのは母が竜となってあの鋼鉄の戦艦を次々、火を吹き上げて撃ち落しているからだった。
竜になった母の強さは伝説のとおりだった。吐く息は、この世のどんな炎より恐ろしく、一度、天空へ舞い上がれば並び立つものはいなく、その咆哮は風を切り裂いて刃に変え、山でさえ寸断する。尾は千の敵をなぎ倒し、目は万の敵を石に変える。魔法を自由自在に操ってその力はどんなものも敵わない。
あの、ものすごい戦艦をまたたくまに二隻落として、わらわらと群がる飛行機械を炎ですべて溶かしていく。地上を動き回るあの不気味な機械も一睨みで石に変えた。
しかし戦艦の一隻からだれかが出てくる。そして杖のようなものであの竜の姿の母さんになにかするつもりだ。とたんに母さんもそいつもにらみ合って口から聞いたこともない言葉をまるでこの一帯全てに響き渡るように唱え始めた。
音が母さんとそいつの間で交差し始めてなにか見えない何かが激しくぶつかり合っているようだ。そのうち、空から雷光がそいつの船に落ちて船が落下し始めた。すると杖をもったあいつはあろうことか自分で空中に浮かんでみせた。それでやっとそいつが魔法使いだと分かった。魔法使いは良いことをするやつもいるけど悪い奴もいる。魔法を使うから心を見抜きにくいし、手ごわい相手だって母さんが珍しく物語りに出てきた魔法使いのことを説明してくれた。なんでも私たち、竜族は生まれた時から魔法を知ってるが、奴らは、そういう魔法をしっているいくつかの種族の長の弟子になるんだとか、竜が使う魔法は一番強いとされているけど、絶対に人間なんかには魔法を教えたりは
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