第四話「王国の陥落」
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そが人々の希望なのだ。
もちろん、エレスティアもその千里の彼方を見渡し、未来を知る目でそう危機感をもっている。彼女はいつも自分の存在がもたらしている世界の均衡を測りながら生きてきた。
エレスティアは翡翠の城の一番東の大鏡を利用した大望遠鏡の部屋にいる。その千里眼に望遠鏡を使えばもはやどこまでも見渡すことができる。この望遠鏡は、本来は天文学に使うものだが鏡の位置とレンズの角度で地平線の向こうの出来事さえ見ることができるのだ。
母がこれを使う姿はなんとなく神秘的で、神々しく見える。
アルセイユは今日も母と父と楽しく過ごした子供の頃の夢を見ていた。しかし急に夢の中の空が青から赤に変り、父も母も自分を強く抱きしめて離さない。
両親の抱きしめる力が強くて「苦しいよ」と呟くが一向に聞き入れてくれない。
そして父が、剣を抜いて立ち上がった。
「え?どうしたの、父さん」
そう、自分が呟くと少しこちらに目を向けて。
「アルセイユ、おまえだけは……」
何のことか分からない。気がつくとあたりはあんなに綺麗だった花畑が荒れた荒野に変っている。父は鎧兜を身にまとい、知らないうちにどこかから出てきた兵士に剣で斬り合う。
「アルセイユ、逃げましょう、早く私の背に乗って」
「え、かあさ……うわあっあ!」
そこには母はいなく巨大な竜がたたずんでいる。
しかし匂いが母のものなのですぐにそれが母と分かる。母の背にのるアルセイユ、後ろでもう大勢の兵士の相手を一手に引き受ける父。アルセイユは父の顔が怖くて見られない。
そして赤い空に母が羽ばたく。どこからともなく爆音がして、空高くの母の近くで一斉に爆発する。
しかし母は猛り、そして紅い大きな火炎を口から吐いて地上を焼く。一転して赤い空と火炎でアルセイユの意識が混乱してぐるぐる回り始めて、全てが溶けてどろどろになっていく……そこで、はっと目が覚めた。
「母さん!父さん!」
もうれつに汗を書いてぐっしょりと濡れた寝巻きが体の体温を奪う。
「ゆ……め?」
アルセイユは、周りを見回し、それが夢なのだと確認する。
「ああ、怖かった。どうしてこんな夢をみたんだろう。ああ、まだ夜中じゃないか、どうしよう寝巻きは汗でぐしょぐしょだし。しょうがない、使用人さんたち起こしてもかわいそうだし、寝巻きは自分でとりに行こう」
アルセイユはこの城のことなら何でも知ってる。寝巻きはアルセイユが風邪のときなどにすぐに取り出せるようにこの隣にある衣裳部屋にある。
静かに扉を開け、そして衣裳部屋へもぐりこむと綺麗に折りたたまれて丁寧にしまわれてる寝巻きをぐちゃぐちゃにしながら下着を一そろいとお気に入りの寝巻きを出した。
そこらじゅうに寝巻きが山になって散らかってしまっているが、自分が風邪を引くよりはいいだ
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