SS 『サブパイロットか、強化パーツか』
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られたのではない。あの大きな回転刃を使わずに、ブラスタのフライト・ユニット中央をしこたま蹴りつけたのだ。
『動きが悪いぞ! 私を馬鹿にしているのか!?』
「そんな訳ないだろ!? こっちだって必死なんだ!」
『いえ。VXどころかブラスタ自体を使いこなしていないではありませんか』
遂に、通信でアイムまでもが割り込んでくる。
その上、アリエティスの接近にまたもハロが自動で反応した。
「敵接近! 敵接近!」
「だから、それはわかってるって!!」
ハロに喚いたつもりだったが、それがアイムの機嫌を損ねてしまう。
『何やらコクピットの中が騒がしいようですね。何か細工をしましたか? クロウ・ブルースト』
「あ!?」しかし、元々が嫌いな相手だ。応答も邪険になりがちなのは当たり前と、クロウ自身は自覚している。つまりは、何も考えずに反応した。「こっちは取り込んでいるんだ! いちいち声をかけてくるな! うっとおしいっ!!」
『はい…?』
それは低い声が、一言だけした。そう、一言だけ。
虚言家のアイムも、嘘が出るのは口からと決まっている。その態度や口調は、あの男の心境や状態を非常に正確に写し取る。
聞こえてきたたった一言に、クロウは火山の噴火を見る思いがした。キレたのだ、この瞬間に。
アイムの心中を察したパールネイルが退いた直後、ブラスタに接近しかけていたアリエティスが一旦距離をとる。何を始めるのかと構えた矢先、アリエティスが両手を大きく広げた。
『これがブラッディ・ヴァインです!』
アイムの叫びに合わせ、胸部から4本の赤い螺旋が前方の四方向に伸びる。そこから伸びた赤い光は細くしなりつつ、ブラスタを目指した。
『余計な手間をかけさせてくれる!』
ティエリアのぼやきに合わせ、ヴァーチェがGNフィールドを機体前方に展開しながら赤い蔦を全てその身に引き受ける。何と心強い仲間の援護防御か。
幸いヴァーチェに届く事なく、緑に輝く粒子の壁が損害を未然に防いでくれた。
クロウはほっとし、「ありがとう、ティエリア」と本心から礼を呟いた。
そこで再びハロが喚く。
「敵接近! 敵接近!」
クロウは、この念押しに神経を逆撫でされてしまう。識別と距離、方向の情報を機体から直接得る習慣が身に染みついているので、何も伝えていない音声のナビゲーションに耳の感覚を取り上げられる事自体が苦痛に感じられてならないのだ。
「色々有り難いんだけどよ、頼むから」
『クロウ・ブルースト、貴方は…』
「少しの間だけ黙っててくれないか!?」
単に、間が悪かったとしか言いようがない。勿論クロウとしては、ハロに指示したつもりだった。しかし、こちらに話しかけようとしていたアイムを、結果としてクロウは遮った恰好になる。一段階声のボリュームが大きくなった状態
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