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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第9話『──ごめんな』
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磨耗している故に、それ以上追い込めば根本的な部分で壊れてしまいかねないからだ。
だからこそ、後から『
対魔傭兵
(
リ・メイカー
)
』としての心構えは徹底的に教えている。が、やはりそれでも他の面々に比べるとその意識が低いのだ。
ジークが外敵である筈の
彼女
(
スィーラ
)
に情を見せたのも、それが原因であった。
ジークは元は孤児である。親と呼べるような存在が居ない故に、そういった常識などには疎い。ジークの持つ『正義』は、世間の言う『正義』とは別物なのだ。
社会において、魔族とは災厄の象徴。絶対に相容れない、相容れてはならない永遠の敵。
故にこの少女に対して、人々は困惑するのだ。
自分達を救った、目の前の存在が理解できないから。
自分達を守った、目の前の存在が把握できないから。
自分達を見捨てなかった、目の前の少女がただ恐ろしいかったから。
だからこそ。
彼女と同じ魔族によって、掻き乱された命が。
彼女と同じ魔族によって、踏み躙られた拠り所が。
彼女と同じ魔族によって、打ち壊されたプライドが。
そして悲鳴をあげる矮小な心が、行き場のない怒りを彼女に向けてしまうのだ。
「……ぉぇ、ぁ……ぃ。……ぉぇ……ぁ、ぃ……っ!」
ボロボロと頬に大粒の涙を零して、死徒の少女が喉から掠れた声を絞り出す。けれどもそれは意味ある言葉とはならず、ただ音であるままに消えてしまう。
ただ怖くて、ただ拒絶されるのが恐ろしくて、ただただ首を振る。しわくちゃになった顔を拭い、これ以上の拒絶の言葉を聞きたくないと耳を塞ぐ。けれども、相変わらず小石やゴミが彼女に投げつけられ、人々のお門違いの怒りが彼女を蝕んでいく。
誰も、悪くはないのだ。
最初から、人間と魔族では相容れる事はない。
分かり切っていた事の筈だった。
けれども、
異
(
ジ
)
常
(
ー
)
者
(
ク
)
だけはそれを認められない。
「──違う、だろうが……っ!」
彼女と人とで何が違う。彼女は人に仇成す存在か?否、絶対にない。ありえないのだ。だからこそ、ジークの心にはドス黒い憤怒が生まれる。
これが。
この拒絶が。
この敵意が。
この絶望が。
彼女に貰った大きすぎる恩に対する返礼か?
「ふざ……けるな……っ!」
──機能限定解放、『ファナトシオルグス』。
光の剣を抜き放ち、目の前に蔓延る阿呆達を焼き切らんと剣を振り上げる。同時に『
対魔傭兵
(
リ・メイカー
)
』の面々が武器を構え、剣に対する構えを取る。
自らの激情の赴くままに腕を振り下ろし、光を打ち放とうと魔力を込め−−
−−けれども。
彼女
(
スィーラ
)
が、それを許さなかった。
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