両手の華〜小さいおじさんシリーズ10
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んだ。同時にひゅんと軽快な音を立てて、祝融が居た辺りの襖にカツカツ、と矢が数本刺さる。
「ありゃー。言いにくいんだけど、出る時若干請求させて頂きますよこれ」
「…お前、一人っ子だろ」
「しかしな、一つ疑問がある」
豪勢が炬燵の影の安全な場所を確保しつつ、小さく呟く。
「あのカワイ子ちゃん達が余から貞操を守る為に護衛をつけるのは分かる。だがその護衛同士が仕事そっちのけでやり合っているのはどういうわけなのだ?」
―――お前はお前で貞操までどうこうする気だったのか。
「あれこそが彼女らの本来の仕事ですよ」
炬燵の影に丸まっているせいで、白頭巾の姿も表情も見えない。
「貴方への牽制は、私を宴の座に引っ張り出すことで終了しています。なのに彼女らが呼ばれた理由は…マウンティング、というやつでございましょうね」
「…まうん…?」
「彼女らは一見、仲睦まじい姉妹のように見えましょう。実際、仲は悪くない。…だが女性同士というのは本来、互いの立ち位置をとても気にするのです。あからさまに相手より格下になる訳にはいかない。プライドが許さない」
―――うっわ、なんかドロドロした話になってきたぞ。
「なので常に自分が格上だと、無言の圧力を相手にかけ続けるのです。一応、貴方への牽制という建前で呼ばれた彼女たちはその実、互いへの牽制なのですよ…」
くっくっく…と嫌な笑い声が響いた。
「業が深いですね…実に、業の深いものです」
―――え?二喬って…え?
「わぁ…こりゃ大事故物件だなぁ…」
三ノ宮がドン引きを隠すことなく呟いた。
「だからそれうちのせいじゃないでしょう!?」
「その台詞そっくりお前にブーメランだからな!!敷金は返せよ、追加の賠償とか絶対払わん!!」
「それとこれとは別の話です!!」
「別な訳あるか!!そんなこと云うならもう、あいつらここに出て来れないようにするぞ!!襖に目張りするぞ!!」
「えっそっそれだけは!!…わ、わかりましたよ。彼ら由来の瑕疵は見逃します……」
すっかり本来のふてぶてしさを取り戻した白頭巾が、また羽扇の影でくすくす笑った。
「……あの御仁も、ようやく戦の仕方を覚えたようですね…まだまだ、拙いものですが……」
―――え?
「私なら念書を書かせた上で精神的打撃を理由とした損害賠償まで持っていきますが……」
うっわ、えげつねぇ…ていうか、俺のことを云っているのか?
「―――さて、この不要な茶番に終止符を打ちましょうかね」
白頭巾は軽く咳ばらいをすると、すっと腰を上げた。
「おや、そこなる麗しき方は、かの有名なあの傾城ではございませんか!?」
豪勢が弾かれたように振り向いた。真っ先に。
「傾城!?」
「まじで傾城!?」
「えっどこどこ」
男三人が
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