両手の華〜小さいおじさんシリーズ10
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宮と大家の息子が身を乗り出して襖の隙間に注目する。僅かな隙間から、さらりと上等な絹が零れた。
「おおぉ!!」
「……お?」
三ノ宮があれ?て感じの声をだす。正直、俺もあれ?と思った。
「……普通…っすね」
「あー、いや、普通にそこらに居たらカワイイけどな…」
飲み会の席に居たら普通に嬉しいかなーくらいのレベルの子が二人、豪奢な絹の袷を羽織って襖の影から滑り込んできた。…正直、貂蝉レベルの美女を想像していたから、この期待値を何処に持っていけばいいのか分からない。
「当時は通常、自分の妻は余程親しい人間にしか晒さないのが常でしたからね。会ってみたらそこまでの美女じゃない、というのはよくあることだったんですねぇ」
大家の息子が眼鏡をくいくいずり上げながら、余計なことをべらべら話し始めたので、二喬のどっちかがギロリとこっちを睨んでいる。
「古代中国の後宮ではね、写真なんかないから絵師に自分の似姿を描かせて皇帝にアピールしていたんです。絵師に金を積んで、美女に描いてもらうのが一般的で。どんな美女でも絵師に金を積まないと、皇帝のお召しはなかったとか」
君が中国史に詳しいのはよく分かったからもう黙ってくれ。襖の前で絶世の美女様がすごい顔してんぞ。
「おぉ、おぉ、噂に違わぬの美しさだのう!ほれ二人とも、もっと近う」
豪勢がほくほく顔で二喬を差し招いた。こっちのボンクラ歴史メガネの失礼発言をフォローしてくれたのか、本当にストライクだったのかは分からないが少なくとも、久しぶりの若い女の子に素直にワクワクしているようだ。そう云われれば悪い気はしないらしく、二喬は豪勢の正面に置かれた脇息に肘を掛けた。白頭巾は相変わらず凝固しているが、貂蝉の時に比べると少し余裕を感じる。
「夫がいつもお世話になっていると聞いております〜」
若干背が低い方の喬が『一応』みたいな空気丸出しで頭を下げた。きっとこっちの子が小喬だ。ちょと釣り目気味だが、目鼻立ちが整っていて無難に可愛い。何より、肌がきめ細かくて美しい。
「いやいやいや、あの男には勿体ない美しさであるな、どうだ二人まとめて我が連雀」「ところで小喬、尚香ちゃんには連絡忘れてない?」「ばっちり〜」
―――あれ?
「――あ、きたきた、きたよ」
襖の影に、弓を構えたアマゾネスみたいな感じの女が見え隠れしていた。顔立ちは整っているのだが、まっすぐ俺たちの方を睨み付ける目つきは、狩人のそれだ。目が異様にでかいのが怖い。
―――怖い。美人だがこれ完全に白頭巾の嫁寄りの女だ。
「尚香ちゃ〜ん、こっち!ここ座るの!!」
小喬の方が、ポンポンと隣の畳を叩く。尚香、と呼ばれたアマゾネスは弓を引き絞ったまま、じりじりと近づいてくる。なにこれほんと怖いんだけど。
「そうそう、私ね、この前旅行で
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