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ネフリティス・サガ
第二話「竜の少年」
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鳴き声が城にこぼれました。すると見ていた侍女の一人がもうやりきれな

くなってアルセイユを抱きしめました。頬をすり寄せ自分の子のように抱き寄せます。

しかしアルセイユのお母さんと叫ぶ声は止められません。

その場で忍び泣く侍女も一人二人となって、

一人の侍女がエレスティアに言い放ったのです。
「エレスティア様。アルセイユ様はあなたがもっと自分に会いに来てくれることを望んでいるのです。エレステ
ィア様はいつも展望室の魔法望遠台で始終、万里の彼方ばかりを見ておられて自分のすぐ近くにいる。もっと自
分を必要となさっている存在をお忘れなのですか!私達は日にバターとパンにぶどう酒を買えるお金を充分に稼
ぐために愛する子供をおいてこの城に奉公に来ます。ですが私たちの子供にはおじいさんもおばあさまもおりますし仲間の隣近所の子供たちと自由に遊ぶことができます。それゆえ寂しさも忘れ、帰れば一日のことをそれはもう沢山教えてくれます。それなのにエレスティア様は!」

「母親失格ですか?」エレスティアは少し切なそうに眉を潜めて問いかけました。エレスティアの言葉は相手を
ハッと呼び覚ますような力があります。その侍女もその言葉に言葉を失くしてしまいました。

「それは!」

「そうでしょう、アルセイユ、この城にいてお前の心をいつもひしひしと感じているよ、私もどんなにかお前に

会いたくて今日ばかりはお前が本当に思いつめてるのを感じてきてつい、ここに来てしまった。そして一声、声
をかけただけでそのように泣きじゃくるお前を見ていて侍女たちの悲しさもこの城の冷たいくらいの静かで広い
空間もどんなにお前にひどい仕打ちをしているかよくわかった、だけどもわかっておくれ、私は、この国の百年
後も生きるし、そしてその百年後もそのもっと後も生きる。そしていつかお前が逞しく育つ日も今日と同じく見
ることになるだろう、いいかいアスレイユ、私達には龍の血が脈づいているのだ。一年が一分のように時はたつ
が、実際はその一年を普通の龍ではない人間のように過ごす、お前は今は若龍で育ち盛りだから時が立つのが早
くもありそして遅くも感じる。それは龍という生き物が人間のように百年ばかりの時しか生きるものではないからなのだ。お前の今日の悲しみも私の愛しさも年月をかけてゆっくりとお前の中に積み重なってそしてゆくゆくは一番よい形で心をそだてるのだ。アスレイユ、来なさい、今日は北方の空が透き通るように晴れ渡っている。こういう時、災いはやってこない。私は危険を感じたら、すぐさま、戦衣装に着替え、空を駆けて北方へ万里を駆けて行かなければならない。でも今はお前を力いっぱい抱きしめておきたい」
 アスレイユはぐずりながらも母エレスティアの胸に飛び込んだ。エレスティアは膝を
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