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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十一話 元帥杖授与
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勢死ぬに違いない。
ヴァレンシュタインが玉座の前に立った。そして片膝をつく。
「ヴァレンシュタイン、このたびの武勲、まことに見事であった」
「恐れ入ります、臣一人の功ではありません。帝国の総力を挙げた結果にございます」
「そうじゃの、予もいささか手伝ったの」
「はっ」
陛下は上機嫌だ。陛下にとってヴァレンシュタインは戦友なのかもしれない。共に反乱軍を謀り、フェザーンに通じた裏切り者を倒した……。
「そちを貴族にしてはどうかと言うものが有る」
「……」
「これまで平民が帝国元帥になった前例は無い。貴族に列するべきだとな」
ヴァレンシュタインは顔を伏せたまま答えない。周囲がざわめく。陛下の問いに答えない、本来なら不敬といって良いだろう。答えないことで不快感を表しているのか……。陛下も怒ることなく話し続ける。
「どうじゃな、ヴァレンシュタイン」
「その儀は御無用に願います」
「ほう、いらぬか」
「臣は平民として最初の元帥かもしれません。しかし最後の元帥ではありません。御無用に願います」
周囲がまたざわめいた。最後の元帥ではない。その言葉の意味する所は貴族の否定……。
「良かろう、好きにするが良い」
陛下は上機嫌で笑うと、式部官から渡された辞令書を読み始めた。
「シャンタウ星域における反乱軍討伐の功績により、汝、エーリッヒ・ヴァレンシュタインを帝国元帥に任ず。帝国暦四百八十七年九月二十一日、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世」
ヴァレンシュタインは立ち上がって階を上り、最敬礼とともに辞令書を受け取った。ついで元帥杖を受け取るとそのままの姿勢で、後ろ向きに階を降り陛下に最敬礼をする。
数歩後ずさるとヴァレンシュタインは華奢な体を翻した。身に纏うマントが微かにはためき、濃紺のサッシュが現れる。そのまま、ほんの数秒の間、ヴァレンシュタインは黒真珠の間を見渡した。
皇帝フリードリヒ四世を背後に黒真珠の間の廷臣を見渡す。音楽が流れ始めた。勲功ある武官を讃える歌、ワルキューレは汝の勇気を愛せり。その音楽とともにヴァレンシュタインは歩み始めた……。
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