第36話 serment
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「言って...欲しいです」
気が付けば花陽はポツリとつぶやいていた。
ここから先の言葉を紡いだら、もう後戻りはできない。そうとわかっていながらも彼女は言葉を止めることはできなかった。
「な、なにをだよ」
「助けて欲しいって...相談に乗って欲しいって。ううん、そんな具体的な言葉じゃなくてもいいんです。もっと単純でいいんです。怖いとか不安だとか、そういうことを一言でも言って欲しいんです!」
「花陽?な、なにを言って───」
この期に及んでまだ誤魔化そうとする...違う。花陽を巻き込まないようにシラを切り続ける大地に花陽は切り捨てるようにこう言った。
「私は知ってます......大地くんが記憶喪失だってことを私は知っているんです!」
さっきよりも大きな声で、花陽ははっきりと断言する。
誤魔化しきれないと理解した大地は肩をビクンと大きく動かす。
────大きく。それこそ、隠すことを続けてきた大地の決心を”大きく”揺るがすような反応だった。
すっと、彼は視線を逸らす。
戸惑っている大地を見て、花陽も少し罪悪感に苛まれる。
でも、それがどうしたんだ。
花陽はかつて、大地に救われたことがある。『スクールアイドル』になりたいという想いと、どうせ私にはできっこないと悩んでいた彼女に手を差し伸べてこの道を歩む決意の場を与えてくれたことがある。
彼の優しさと気遣いのおかげで...。
本当は自分自身がなることを諦めて”μ‘s”の活躍を応援しようと一瞬考えていた花陽の前に、笹倉大地は現れた。そして、こう誓ってくれた。
────花陽の笑顔も............俺が守ってやる!
全てを押し殺して一人で解決しようとしていた花陽の前に、大地は現れた。
彼女の心の奥底へ、土足で遠慮なしにズカズカと踏み込んでく様なやり方で。
確かにそれはデリカシーの欠片も無い、プライバシーを侵すような、普通なら許されないやり方だっただろう......
しかし、小泉花陽という夢見る女の子は、そうして彼に救われたのだ。
...だとしたら、彼も...笹倉大地もそんな方法で救われたっていいじゃないか?
だからこそ、花陽は言う。
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